稼ぎすぎると年金が減らされる制度?
田上さんがハマったのは「収入が多すぎるシニア」に対する年金制度の落とし穴です。公的年金を受け取りながら給与や役員報酬などを受け取る人は、「在職老齢年金」という制度に注意が必要です。
在職老齢年金という名称を見ると、特別な年金を受け取れるようなイメージをする人もいるかもしれませんが、実態はむしろ逆。老齢厚生年金の基本月額と給与・賞与など会社での収入の合計が月50万円(2024年度)を超えると、年金の一部または全額が支給停止になるというのが基本的な仕組みです。
停止額は「(老齢厚生年金の基本月額(※)+総報酬月額相当額-50万円)×1/2」です。田上さんの場合、年金は月にすると23万円程度で、そのうち老齢厚生年金が月16万円。そして、新しく入った会社から受け取る給与(総報酬月額相当額)は月41万円ほどでした。
結果として、月3万5,000円ほどの年金がカットされてしまうことになったのです。
※基本月額…老齢厚生年金(年額)を12で割った額
※総報酬月額相当額月給(標準報酬月額)に、直近1年間の賞与を12で割った額を足した額
これには温厚な田上さんもさすがに怒り心頭。愚痴をこぼします。
「働いて金が減るなんて、年寄りは稼ぐなっていうことなのか? あと何年でも働きたいけれど、その分、年金で損をする金額も積み重なっていくっていうことか。営業成績が良くて賞与をもらえたとしたら、もっと削られる…? あまりに理不尽すぎるよ」
とはいえ、働くことに収入以上の価値があるというのも田上さんの考え。そのため、会社とは在職老齢年金が適用されない範囲の収入で、その分、仕事の負荷も多少下げるということで、話し合いをしたのだとか。
それなりに稼ぐ予定のシニアは注意を
高齢化が進み、今や70代で働くのも当たり前の時代。それなのに、収入が多いから年金が減るという制度は時代錯誤と言う意見も多く、経団連は制度の見直しと共に将来的な廃止といった見解を示しています。
とはいえ、当面は「そこそこ稼ぐ予定のシニア」はこの制度に注意が必要。在職老齢年金制度について知っておくと共に、最新の動向に注意しておくとよいでしょう。
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