(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●政策据え置きは予想通り、インフレ率に関する声明の修正は、パウエル議長が言葉の整理と説明。

●パウエル議長はトランプ政策の内容を見極めたいとし次回3月の利下げも急ぐ必要はないと述べた。

●引き続き6月と12月に0.25%ずつの利下げを予想、目先2月1日の米関税実施の有無に注目。

政策据え置きは予想通り、インフレ率に関する声明の修正は、パウエル議長が言葉の整理と説明

米連邦準備制度理事会(FRB)は、1月28日、29日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を4.25%~4.50%で据え置くことを決定しました。据え置きについては、市場でほぼ織り込み済みであったため、市場への影響は限定的でした。以下、FOMC声明とパウエル議長の発言のポイントを整理し、今後の金融政策の見通しについて考えます。

 

まず、FOMC声明では、第1段落の「インフレ率は2%の物価目標に向けて進展したが、依然としていくぶん高止まりしている」という前回の表記が、今回は「インフレ率は依然としてやや高めである」に修正されました(図表1)。一見すると、タカ派的な修正のように受け止められますが、パウエル議長は記者会見において、「(第1段落では)少し言葉の整理を行った」、「文章を短くしただけ」と説明しました。

 

[図表1]FOMC声明の主な修正点

パウエル議長はトランプ政策の内容を見極めたいとし次回3月の利下げも急ぐ必要はないと述べた

次に、パウエル議長の記者会見における発言をみていきます。パウエル議長は会見の冒頭で、「インフレ率は依然としてやや高止まりしているものの、2%という長期的な目標にかなり近づいている」と述べました。また、「政策スタンスが以前よりも大幅に緩和され、経済も依然として堅調であるため、政策スタンスを急いで調整する必要はない」との見解を明らかにしました。

 

質疑応答では、トランプ大統領の政策が金融政策に与える影響について問われると、「関税、移民、財政政策、規制政策」の「4つの分野における重要な政策転換により、不確実性が高まっている」とし、「どのような政策が実施されるのか見極める段階にある」との考えを示しました。また、3月に利下げを行う可能性についての質問には、「FOMCの大方の意見として、政策スタンスを急いで調整する必要はない」と述べました。

引き続き6月と12月に0.25%ずつの利下げを予想、目先2月1日の米関税実施の有無に注目

今回のFOMCは、特にサプライズはなく、市場も冷静な受け止めとなりました(図表2)。FRBは今後、雇用と物価の動向をにらみながら、トランプ政策の具体的な中身と実体経済への影響を見極めることになると思われ、政策金利は当面据え置かれる可能性が高いと考えます。そのため、市場の米金融政策の見通しは、雇用および物価関連の指標や、トランプ大統領の言動に、より大きく左右されることになるとみています。

 

[図表2]米10年国債利回りとドル円レート

 

弊社は次の一手は利下げと考えており、FRBは年内6月と12月に25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)ずつ2回の利下げを行うとの見方を維持しています。なお、トランプ大統領は2月1日にカナダとメキシコからの輸入品に25%の関税を課すとともに、中国からの輸入品に10%の追加関税を課す考えを示していることから、目先はここに市場の注目が集まっています。

 

(2025年1月30日)

 

※当レポートの閲覧にあたっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『FRB、政策金利の据え置きを決定 ~「2025年1月FOMC」レビュー【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』)。

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

 

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