不足したキャリア形成に遠のいていくゴール
さらに就職氷河期世代は、その上の世代よりもパソコンには馴染みがあっても、若い世代のように生まれた時からスマホなどに親しんできたわけではありませんから、デジタルとなれば、やはり若い世代の方が親和性は高く、ここでも強みを発揮することはできません。
2020年に新型コロナの感染拡大が始まってからの数年間、企業ではオフィスに出社することなく、リモートワークを導入するケースが多かったのですが、その際、IT機器の操作になれない年配の人たちが大変な苦労を強いられました。確かにIT機器の進化は若者にとっては歓迎すべきものでも、それらが苦手な世代にとっては大変なハンデとなります。
ここまで見てきたように、就職氷河期世代というのは、運よく、あるいは努力の甲斐あって大企業に就職し、正社員になったとしても、決して安泰ではなかったのです。
就職氷河期世代が社会に出た頃からインターネットの本格的な普及が始まり、その後、DXの推進などもあり、就職氷河期世代が中心となっている事務職や営業職などはデジタル化や効率化により人員削減の対象になりやすかったうえ、組織のフラット化が進むことで、本来なら就くことができたはずのポストも縮小されています。
しかも、そのポストの多くは大量に採用されたバブル世代によって占められており、たとえ管理職になったとしても採用人数が少なく、部下はなかなか入ってこず、就職氷河期世代の管理職はマネジャーでありながら、プレイヤーでもあることを求められています。結果、本格的なマネジメントの経験を積む機会は乏しく、管理職や経営層への登用が遅れる原因ともなっています。
それどころか、企業は就職氷河期の採用抑制の穴を埋めるべく、企業が中途採用に力を入れたり、若手の抜擢人事も行ったりしたため、そのあおりで就職氷河期世代のキャリア形成はさらに遅れることになります。
そしてもう1つ、就職氷河期世代の不幸は「人生100年時代」が叫ばれるようになったことです。
就職氷河期世代の多くが40代から50代前半となり、かつてなら「キャリアの折り返し点」や「キャリアの最終局面」に差し掛かるところでしたが、「人生100年時代」ともなると、ゴールは遠のき、新たな人生設計を求められるほか、仕事人生もまだまだ続くために、将来に向けて生成AIなどリスキリングまで求められるだけに大変です。
こうしたことから就職氷河期世代は社会に出る時に「割を食った」だけでなく、社会に出てからも「割を食い続けている」と言えるかもしれません。
永濱利廣
第一生命経済研究所
主席エコノミスト