「スタートアップ企業に投資する」というお金の使い方
スタートアップ企業に資金を提供する、いわゆるエンジェル投資をしている富裕層も増えています。スタートアップでは通常は業歴も浅く利益が出ていないため、銀行などから融資を受けるのが難しいことが多いです。そんなときに資金を提供してくれるエンジェル投資家は、受け入れ企業側にとってもありがたい存在です。
個人投資家の場合、数百万〜数千万円という資金提供が一般的ではないでしょうか。エンジェル投資のメリットはたくさんあります。金銭的なことでいえば、投資先のスタートアップが成功して上場したり、大手企業に買収されたりした場合に投資額の何十倍ものリターンを得ることもあります。
新しいアイデアやテクノロジーに投資をして、その成長を見守ったり支えたりすることはとても刺激的です。雇用の機会創出にもつながる可能性もあり、企業支援を通じた社会貢献も果たせます。
僕自身も、ゴールドマン・サックス時代には仕事を通じてさまざまな投資をしましたが、そのかたわら、個人でエンジェル投資もしていました。働くことで少しずつ手にした自分のお金で若いベンチャー投資家に投資をするという経験です。
エンジェル投資はビジネスアドバイザーでもある
この経験からわかったことは、エンジェル投資は単なる資金提供者ではないということです。
「今後、どんなふうに経営をしていったらいいと思いますか?」「資金調達をしなければならないけれど、どうしたらいいでしょう?」というような相談を受けることも多く、スタートアップの経営にアドバイスをしているうちに僕自身が会社経営している感覚になっていました。
結局、会社員でありながら15社近くで擬似スタートアップ経営体験をしましたが、自分のビジネス経験や専門知識を活用し、若いスタートアップ企業の成長を支援することは僕自身のよろこびでもありました。
ちなみに、日本にはエンジェル税制という投資家にとって非常にメリットのある制度があります。投資先のスタートアップが税制適格であった場合、投資時点でも大きな税制優遇があるだけでなく、万一その投資が損失を出してしまった場合にも、さらに税制優遇を受けることができます。
投資金額のかなり大きな部分を、実質無リスクで投資できていたことから「やらない理由がない投資」として毎年上限額まで利用しています。
富裕層の場合、上記の税制優遇措置を受けることに加え、エンジェル投資を通じてほかの起業家や投資家との人脈を築く機会があるのもメリットだと考えます。もちろん、成功することでリターンがあればうれしいけれど、半分くらいは頑張っている若い人たちにお金を提供したいという気持ちもあると思います。エンジェル投資というお金の使い方もあるということです。
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