富裕層たちはたとえ1兆円を持っていても投資をつづけ、その目的は単なる利益追求だけではないと、元ゴールドマン・サックス証券マンの田中渓氏はいいます。富裕層の投資行動の真意について、『億までの人 億からの人 ゴールドマン・サックス勤続17年の投資家が明かす「兆人」のマインド』(徳間書店)よりより一部抜粋・再編集し、詳しく解説します。
富裕層は1兆円持っていても投資をする
もし1兆円という大金を持っている富裕層がいたとして、その人は日々何をして暮らしているのかを想像してください。毎日昼過ぎに起きて街をぶらぶらしたり、趣味を満喫したりして1日を終える? 海外のリゾート地で朝からシャンパンを飲んだりして優雅に過ごす?
僕が出会ってきた富裕層は、たとえ1兆円持っていても迷うことなく投資をしています。これ以上お金が必要ではないのに、です。
彼らの投資は、必ずしもお金を増やすための投資ではありません。社会への還元を目的とした投資やノブレス・オブリージュの発想というほうが近いでしょうか。投資をすることは経済活動で、お金を循環させることでもある。お金が循環する過程でモノが動き、雇用が創出されてヒトが動く。彼らにとっての投資は、そうした循環をうながす行為でもあるのです。
そうでないケースとしては、お金を眠らせたまま、「お金に働かせないことがもったいない」と投資をし続けるものです。前述したとおり、投資をおこなうことによりカラーバス効果でさまざまなものが見えるようになり、それが自身の学習や経験になる。身に沁みついた投資マインドや、生涯学習の姿勢が、投資を継続させてしまうのです。
富裕層がたどり着く幸福論
彼らに対する僕の見方は「投資という行為自体が、その人自身の幸せになっているのだろうな」というものです。誰かのために投資をしているつもりはないだろうけれど、誰かにチャンスを与えるために資本提供する。それによって自分の幸福感が満たされるということなのでしょうか。
ハーバード大学の研究でも、「人は他者とつながり、他者に支えを与えることで幸せを感じる」とありますが、他人ではなく自分の幸せのために投資をしている印象です。それが結果として他人を幸せにし、社会を豊かにしているのかもしれません。
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投資家
1982年 横浜出身。上智大学 理工学部物理学科卒業。学科首席として表彰を受け同大学院に進学し、外資系の世界を目指し始め急遽渡米。ビジネスセミナー「CVS Leadership Institute」に参加し個人優勝、チーム優勝を果たす。
大学院中退後53回の面接を経て、ゴールドマン・サックス証券株式会社に2007年に新卒入社。間もなくリーマンショックでボーナスゼロ、大幅減給、在籍部署の9割人員削減のどん底を経験。ドラマ「ハゲタカ」の舞台になった投資部門であらゆる投資を行う。500件以上の投資案件に携わり、60件以上の投資案件を実行。投資規模は投資金額ベースで約4,000億円、企業価値・資産価値ベースで1.2兆円を超える。同社でマネージング・ディレクターに就任し、投資部門の日本共同統括を務め、2024年に同社を退社。
在籍17年間で20ヵ国以上の社内外300人を超える「億円」資産家、「兆円」資産家、産油国の王族など超富豪などと協業・交流をする中で、富裕層の哲学や思考、習慣などに触れ、その生態系を学ぶ。退社後は少数精鋭の投資会社にて勤務。同社の不動産投資の責任者を務める。
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連載『億までの人 億からの人』ゴールドマン・サックス勤続17年の投資家が明かす「兆人」のマインド