「御三家」は受験産業が作り出した“信仰”
――中学校受験に関する記事で「御三家はもう古い。次に注目すべき学校はココ!」といった話題や記事をよく目にします。小学校受験においては、そういったランキングや話題性にあまり左右されることなく、本当にその学校の方針に基づいて選べばいい、ということでしょうか?
狼侍さん(以下、狼侍):本質的にはそこだと思います。実は私も中学受験における「御三家」という概念があまり好きではなくて。あれは完全に受験産業が作り出したものだと思っています。それが宗教というか信仰のようになってしまっている。バレンタインデーのチョコレートがメーカー主導で広まったようなものに近い感覚です。
――確かにマーケティングに近い印象もありますね。
狼侍:だから、それに振り回されるのは本当にどうなのかなと思います。それに、今や御三家という概念自体が偏差値で語られる時代でもなくなってきていますよね。むしろ崩壊していると言ってもいいくらいです。それに、いくらでも面白い切り口で、例えば「湾岸系注目の学校はココだ!」のように、作ることはできますが、本質から外れています。小学校受験には偏差値の概念がないため、教育の本質に基づいて選ぶべきだと考えています。
私も著書で私立小学校を分類したマップを掲載していますが、分類するとしたら、学校の設立の歴史や蓄積された教育方針の違いで分けるくらいですね。ただ、それもあくまで一例であって、学力や偏差値で分けるわけではありません。
「ランク付けはしない」「年収に関する話はしない」ワケ
――狼侍さんが小学校受験の情報を発信する際、気を付けていることは何ですか?
狼侍:ランク付けをしないことは徹底しています。また、「フリー(縁故なし)合格」という言葉も使わないようにしています。注目校や「穴場」という表現も、倍率やデータ的な文脈で語ることはありますが、ランク付けに関わるような発信は避けています。
あとは、お金や年収に関する話題は基本的に発信しません。家庭の経済事情は千差万別ですし、実家からの支援がある場合も多いので、「年収がいくらだから」という話には意味がないと思っています。それに、SNSでお金の話題が盛り上がるのは注目を集めたい一部の人たちが発信しているだけだったりします。
――確かに、お金の話題はセンセーショナルになりがちです。
狼侍:「小学校受験」と聞いて、「高級車一台分と言われるほど高額な費用がかかる」などをイメージされている方も多いと思いますが、「小学校受験には何百万かかる」といったステレオタイプな情報発信はしないようにしています。実際、目指す学校によって費用のかかり方は全然違いますし、それをひとくくりに語るのは本質を見失う原因になります。