不動産は「法人」で管理するのがもっとも有効
相続税対策には、相続発生直前に不動産を購入するなどの緊急対策もありますが、人口減少などの不動産リスクが予想される中、アパート、マンションを活用した相続税対策を行うためには、「法人化」がもっとも有効な選択肢だといえます。ここではその法人化について、具体的な方法について見ていきましょう。
まず法人(不動産管理法人)を設立する場合、不動産の管理だけを行わせるのか、運営するアパート、マンションの所有権も移転するのかを検討する必要があります。また、このほかにサブリース(転貸)という選択肢も考えられます。
サブリースとは、不動産管理法人に一括で賃貸し、そこからさらに第三者に転貸する方式です。管理だけを行わせる場合(サブリースの場合も含む)には、アパート、マンションから得られる賃料は個人事業のときと同様に、個人の口座に入ってくることになります。
そして、法人に対しては所定の管理料を支払うことになります。この管理料が、さらに役員報酬や従業員給与として本人や家族に分配されることになります。したがって、所得分散等の節税効果は管理料相当額だけにしか生じないことになるわけです。
一方、アパート、マンションの所有権を法人に移転した場合には、賃貸事業から得られた収益はすべて法人に帰属することになります。つまり、賃料全額に対して所得分散の効果が及ぶことになるわけです。
所有権も法人に移転するのが得策
このように、所得分散の効果をより高めるのであれば、すなわち節税効果を最大限に上げたいのであれば、不動産の管理を行わせるだけでなく、その所有権も法人に移転するほうが得策であるといえるでしょう。
なお、管理だけを行わせる場合には、法人に支払う管理料について注意が必要となります。適正管理料の額は裁判等で争われることが多く、判例等によれば賃貸収入の4~7%程度(サブリースの場合は6~12%程度)であれば問題ないようです。管理料の額が過度に多いと税務当局に税金逃れを疑われるおそれがあるかもしれません。
また、このように形式を整えたうえで、さらに実体も形式に合わせることが求められます。すなわち管理料に見合った管理が現実に行われるように十分な注意を払う必要があるでしょう。