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高級老人ホームに潜む「見えない壁」
山田さんがいう「話が合わない」というのは、入居者の生活感覚や金銭感覚の違いからくるものでした。施設に入居している人たちの多くは資産家や企業経営者で、話題にのぼるのは海外旅行や高級ワイン、さらには投資やアートコレクションの話が中心。山田さんはこう語ります。
「隣に座った人が、南フランスのワイナリーを訪れた話をしていてね。僕にはそういう話題は遠い世界のことなんだ」
また、施設内で開催されるイベントにも、参加をためらうことが多かったそうです。たとえば、月に1度の音楽セラピーコンサートの参加費は3万円、美術館ツアーは5万円以上。山田さんは「お金をかけてまで楽しむ必要はない」と感じ、参加を控えることがほとんどでした。
「息子たちが費用を出してくれている以上、贅沢をするわけにはいかない」と山田さんは話します。その一方で、参加を見送ることで他の入居者と交流する機会を失い、孤立感が深まっていったのです。
こうした状況は、山田さんだけの問題ではありません。2023年に内閣府が実施した『孤独・孤立の実態把握に関する全国調査』によると、高齢者の中には孤独を感じる人が一定数存在します。このような状況は高級老人ホームでも例外ではなく、入居者間の価値観の違いが孤独感を助長する一因であるとも考えられます※。
孤立と財務負担を軽減するために家族にできること
山田さんのような孤立を防ぐために、家族ができる具体策を考えてみます。
1.家族が定期的に訪問し、外部との交流を増やす
家族が定期的に訪問し、施設の外に連れ出すことで、山田さんの孤立感を軽減できます。地元の友人を訪ねたり、一緒に手ごろな趣味活動を楽しむことで、生活に新たな楽しみを加えることができます。
2.入居者層に合った施設を再検討する
施設選びの段階で入居者層を詳しく確認することも大切です。豪華さだけでなく、価値観や生活感覚が似た人たちが多い施設を選ぶことで、孤立を防ぎやすくなります。
3.財務負担を減らす工夫をする
家族が施設費用を補助している場合、財務計画を見直すことで負担を軽減できるかもしれません。たとえば、リバースモーゲージを利用して入居費用を補填する、生命保険を活用する、あるいは自治体の支援制度を活用するなど、選択肢を広げて検討しましょう。
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