これからどうしよう…AさんとBさんの老後計画は“白紙”に
翌日、3人は今後のことについて、長い時間をかけて話し合い、次のような結論を出しました。
・出産~出産後1年が経つまではCさんは実家で暮らし、生まれてくる子の育児に専念する
・その後は徐々に自立する
・大学について、休学も考えたが現実的ではないので退学する
・生まれてくる子の父親は探さないし会わない
ところで、59歳のAさんは、あと1年で定年を迎えます。もともと、65歳まではいまの会社に再雇用され、その後は夫婦でゆっくり暮らすプランを立てていました。
しかし、娘が出産するとなると、徐々に自立を目指すとはいえその後も一緒に暮らすかもしれませんし、Cさんと孫に対して金銭的な援助も必要になるでしょう。夫婦の老後計画が大きく狂う可能性は否めません。
ひとまず金銭面だけでも今後の見通しを立てて安心したいと考えた夫婦は、以前Aさんの勤務先でセミナーを行ったFPのもとを訪れました。
Cさんが“働かないまま”だと、80歳前後で「老後破産」危機に
A夫婦から今後の家計収支について聞き取りを行い、下記のようにまとめました。
<現在>
Aさん:59歳、Bさん:56歳
<貯蓄>
約500万円
<収入>
■Aさんが60歳になるまで
→年収1,000万円(月額74万円+ボーナス)
■60歳(定年退職)
→退職金(退職一時金)1,500万円+企業年金月額5万円※
※企業年金は80歳まで。
■60歳~65歳まで
→年収500万円(いまの会社に5年間再雇用。月額41.6万円)
■65歳~67歳まで
→Aさんの老齢厚生年金(月27万円)+企業年金(月5万円)=月32万円
■68歳~80歳まで
→Bさんが65歳になり、夫婦の老齢厚生年金(月31万円)+Aさんの企業年金(月5万円)=月36万円
■80歳以降~
→企業年金が終了。夫婦の老齢厚生年金月31万円
<支出>
■消費支出
→月約35万円(60歳以降、急激な増減は発生しないと仮定)
■税金・社会保険料
→現在、約20万円が毎月給与から天引きされている。
・60歳~65歳まで:約9万円が毎月給与から天引き。
・65歳以降:月約4万円から3万5,000円に減少の見込み。
夫婦は自宅の住宅ローンをすでに完済しています。また、大学3年生のCさんのため、もともとは残り1年分の学費・仕送り分として約250万円を想定していました。これはそのまま孫の出産と育児費用にあてます。
ただし、Cさんが自立せず、娘と孫の生活費や孫の教育費もA夫婦が負担するということになると、Aさんが80歳前後、孫が大学に入学するころに夫婦の家計は破綻しかねません。
しかし、言い換えれば、Cさんが生活費と子どもの教育費分働くことができれば、Cさんと孫が実家を出ていかず同居することになっても、夫婦の家計は成立します。
とはいえ、当面A家は出費が重なるため、固定費を見直すなど無駄な支出を減らすことは必須といえます。また、退職後予定していた車の買い替えや旅行、家のリフォームといった一連の計画は、Cさんの生活が落ち着くまでは、最小限に留める必要がありそうです。
Cさん自身は、都度母子自立支援員への相談などを行いながら、ひとり親家庭の就業支援制度の利用をしながら、自立を目指していく必要があります。
AさんとBさんができること
Cさんはまずは無事に出産を終えることが大事です。そして、その子を育てながら、これからの生き方を徐々に決めていくことになるでしょう。
家計の見直しももちろん重要ですが、A夫婦と同様、Cさん自身も大きなショックを受けていると推察されます。今後は、愛するCさんを“愛娘”としてではなく、生まれてくる孫の“母”として、適切にサポートすることが必要になってくるでしょう。
牧野 寿和
牧野FP事務所合同会社
代表社員
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