小学校で一番だった子が集まる開成中学校、人生初体験「中間試験で43人中42位」も…生徒が挫けないための「ある仕掛け」【開成学園の元校長×SAPIX代表の対談】

小学校で一番だった子が集まる開成中学校、人生初体験「中間試験で43人中42位」も…生徒が挫けないための「ある仕掛け」【開成学園の元校長×SAPIX代表の対談】
(※写真はイメージです/PIXTA)

年齢や属性の異なる人たちとどう関わり、どう成長していくのか。先輩と後輩の「タテ」の関係と、同年齢の生徒同士の「ヨコ」の関係を通して社会性を育むことこそ、学校教育の重要な役割である――開成学園の元校長・柳沢幸雄氏がそう語る理由とは? ※本記事は、高宮敏郎氏の著書『「考える力」を育てるためにSAPIXが大切にしていること』(総合法令出版)より一部を抜粋・再編集したもの。

北鎌倉女子学園における「社会性の育成」

髙宮

現在、学園長を務めていらっしゃる北鎌倉女子学園にも、そういう仕組みがあるのでしょうか?

 

柳沢

実は、今の学校に赴任して一番印象的だったのが「タテ」の関係が弱いことでした。それを受けて、新しく「理系教科委員会」を発足させました。

 

例えば、トップ校には、数学オリンピック出場を目的にしたクラブ活動がありますね。それと同じように、数学系・理科系・情報系の検定に、学年を越えてチャレンジする団体をつくろうと考えたのです。数検ならば、1級から11級まで幅広いレベルが設定されており、自分の実力に合わせで挑戦できます。週2回、部活動のように集まって、問題を解いて、実力を上げていく。そこには学年の壁もカリキュラムの違いもありません。

 

といっても、ここでの目標は、級の取得を目指すことではなく、いろいろな学年の子どもが集まる場を設け、タテのつながりをつくることなのです。

 

髙宮

鎌倉市の観光ガイドのボランティアにも積極的に取り組んでいるとお聞きしました。それも「社会性の育成」を意識したものですか?

 

柳沢

そうです。学校以外の場所で、生徒同士が交流しながら一つの目標に向かって力を合わせることと、鎌倉の地域特性を掛け合わせた試みです。

 

また、「生徒広報部」といって、受験生やその保護者が来校した際に、学校紹介や校内案内を担当する高1~3生による組織もあります。入学したばかりの高1生が入部すると、学校の様子も分かるし、先輩とのつながりもできて一石二鳥というわけです。

「リアルな場所」でしか養えない力

世界最難関校「ミネルバ大学」に合格した開成生は、伝統的なアメリカの大学に進学

髙宮

どれだけインターネットが発達しても、学校や教室といった「リアルな場所」でしか養えない力があるということですね。そういう意味で、特定のキャンパスを保有せず、オンライン授業のみで展開するミネルバ大学のような学校が、今後どういう人材を輩出し、社会にどんなインパクトを与えるかは興味深いものがあります。

 

※ 2014年秋に設立した、アメリカ・サンフランシスコに本部を置く結合私立大学。合格率は2%未満で、世界最難関校の一つに数えられる。

 

以前、「開成からミネルバ大学の合格者が出たけれども、その生徒は結局、伝統的なアメリカの大学に進学した」というお話を伺いました。情報が少ない中で判断するのは難しいでしょうが、先生はミネルバ大学についてどうお考えですか。

 

柳沢

前提となる条件を整理しますと、そもそも大学教育が満たすことのできる事柄には二つあります。一つは職業訓練。もう一つは、学間を志す学生に対する教育、つまりリベラルアーツです。

 

ドイツはそのあたりの線引きがはっきりしていて、職業教育は高校段階から分けて行っています。リベラルアーツをオンライン授業で学べるかどうかは難しいところですが、職業教育は間違いなくできるでしょうね。国家試験のための勉強などは向いているだろうと思います。

 

髙宮

知識なり、スキルなりを身につけることはできるということですね。

 

柳沢

ただし、仮にそれで医学部に受かっても、患者の顔を見ずに問診するようなお医者さんに育つかもしれません。「診察はできます。でも、患者と目を合わせられません」では困りますよね。

 

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※本連載は、高宮敏郎氏の著書『「考える力」を育てるためにSAPIXが大切にしていること』(総合法令出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

「考える力」を育てるためにSAPIXが大切にしていること

「考える力」を育てるためにSAPIXが大切にしていること

高宮 敏郎

総合法令出版

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