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対談者:北鎌倉女子学園学園長・柳沢幸雄氏
東京大学名誉教授
1947年生まれ。開成中学校・高等学校、東京大学工学部を経て、企業勤務後、同大学大学院工学系研究科化学工学専攻博士課程修了。工学博士。研究テーマは「空気汚染と健康の関係」。ハーバード大学公衆衛生大学院准教授、同併任教授を歴任。
シックハウス症候群、化学物質過敏症研究の世界的第一人者として知られ、ハーバード大学ではベストティーチャーにも選出。帰国後、東京大学大学院教授などを経て、2011年4月から2020年3月まで開成中学校・高等学校校長を務める。2020年4月から現職。主な著書に、『18歳の君へ贈る言葉』(講談社+α新書)、『男の子を伸ばす母親が10歳までにしていること』(朝日新聞出版)など。
コロナ禍の開成学園
髙宮
2020年春、ちょうど柳沢先生が開成学園の校長を退任されるタイミングで、新型コロナウイルス感染症の流行が始まりました。なかなか先が見通せない中で、ある程度の道筋をつけて後任の先生方に引き継がれたわけですが、あのとき、先生はどういう判断をし、どんなことを考えられたのか、改めて伺ってもいいですか。
柳沢
安倍晋三総理(当時)が、全国の小中高に向けて臨時休校要請を出したのが2020年2月28日でした。あの年はうるう年でしたから、翌29日は、これから何をすべきかひたすら考えていました。あの時点では、「休校期間は一ヵ月」という話でしたが、私はハーバード大学で公衆衛生を教えていた人間ですから、パンデミックがどういうものか、それなりに知っています。「これは一ヵ月では収まらない」「少なくとも5月の連休明けまでは続く」と感じました。
5月の連休明けまで学校を閉じるとなると、休校期間は2ヵ月半になります。そこで教員たちに話したのは、「我々は生徒から授業料をもらっている。その分のことはやらなきゃダメじゃないか」ということでした。
現実的な方法として、頭にパッと浮かんだのは大学受験予備校の衛星授業です。開成でもそれに近いこと、つまり、オンラインで授業を配信しようと考えました。開成にはコンピュータ分野を得意とする教員が複数いましたから、彼らを呼んで、「ここでやらなきゃ、開成はつぶれる。でも、うまくいけば非常に強いアピールになる」と話し、授業の配信を何とか形にしてほしいと頼んだわけです。
そして、「4月6日の新学期から、開成は開成の教育を行う」と宣言しました。すると、わずか1カ月の準備期間にもかかわらず、なんとか新学期のスタートと同時に授業を配信する体制が整いました。手前味噌ですが、これはすごいことだと思いましたね。
髙宮
開成にはベテランの先生、あるいは、ベテランでなくても授業のやり方にこだわりのある先生がたくさんいらっしゃる中で、どう説得されたのですか?
柳沢
説得したというよりも、各学年に任せることにしました。開成は、学年がある程度独立しています。そのかわりに、結果が出なければ、学年主任の教員はその責任を負うことになっています。
というのも、学年を学年主任の名前で呼ぶので、生徒の成績が芳しくない場合、「〇〇学年はどうだった」「XX学年はこうだった」と後々の語り草として教員の名前が残るというわけです。どうすれば結果につながるだろうと考えれば、自ずと判断は絞られてくるだろうと思っていました。
