妻へ、次男へ・・・「遺したい人」に財産を渡す遺言書活用の具体例

今回は、「遺したい人」に財産を渡す遺言書活用の具体例を見ていきます。※本連載は、池田税務会計事務所の代表税理士の池田俊文氏の著書『50歳からの相続・贈与の本』(駒草出版)の中から一部を抜粋し、大切な家族と財産を守るための相続や贈与に関する法律知識や税金知識を幅広く紹介します。

「全財産を妻へ」の場合は遺言書が不可欠

最近は生活環境が変化してきたためか、性格の不一致などで抵抗なく離婚する人が増えています。2人ともバツイチで再婚、夫がバツイチで妻が初婚、また、子どもを作らない夫婦も増え家庭事情も様々です。

 

そんな中、子どもがいない夫が死亡した場合、夫の財産は妻と夫の両親が相続財産を承継することになります。両親が死亡している場合は、妻と夫の兄弟姉妹が相続財産を承継することになります。兄弟姉妹が死亡している場合は、兄弟姉妹の子(甥・姪)が代襲相続人となります。

 

父母はともかくとして、あまり行き来のない兄弟姉妹、ましてや甥・姪となると赤の他人も同然、そういった人に財産を渡すのは違和感をおぼえます。

 

妻と二人で築いた財産は全部妻に相続させたいというときは、遺言する必要があります。兄弟姉妹には遺留分の請求権がありませんから、遺言で「全財産を妻に相続させる」旨の遺言書を書いておけば、すべての財産が妻へ渡ることになります。もし、遺言書がないときは、法定相続分の4分の1は兄弟姉妹に財産が渡ることになります。

 

【図表1 子どもがいない夫が死亡した場合】

後妻亡きあと、後妻の親族に財産を渡したくない

このたび夫が死亡しました。夫と後妻の二人で築きあげた財産は、後妻との間に子どもがいないため後妻が2分の1、先妻の子どもが2分の1の財産を相続しました。

 

夫の財産を相続した後妻が死亡した場合、後妻が相続した全財産が後妻の兄弟姉妹に渡ることになります。しかし、後妻は夫と先妻との間の長男と仲がよく、また、夫からも長男に財産が渡るようにしてほしいと頼まれていたため、後妻は、「夫の長男に全財産を遺贈する」という内容の遺言書を書きました。

 

これで、後妻が死亡した場合には、兄弟姉妹には遺留分の請求ができないため、後妻の全財産が長男に遺贈されることになります。

 

ちなみに、長男が取得した財産に係る相続税は、長男は一親等の血族でないため、長男の相続税には2割の税金が余分に課せられることになります。

 

【図表2 夫の財産を相続する後妻が死亡した場合】

受遺者が亡くなった場合には遺言書の書き直しが必要に

母は、長男の普段の素行が悪く、暴力を振るったり雑言を吐くことが我慢ならず、次男に全財産の4分の3を遺贈する旨の遺言書を書いていました。しかし、受遺者(遺言で財産をもらう人)である次男が母より先に亡くなってしまいました。

 

この場合、母の遺言書は受遺者がいなくなったことで無効となってしまいます。長男に遺留分程度の財産しか渡さないようにするには、次男の子どもである孫に対して再度、遺言書を書き直す必要があります。

 

遺言書を作成しない場合、長男と孫が母の財産をそれぞれ2分の1ずつ相続することになります。

 

【図表3 母ができる限り長男に遺産を渡したくない場合】

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    池田税務会計事務所 代表税理士

    1950年宮崎県生まれ。立正大学経済学部卒業後、宮崎市内のシーサイドホテルフェニックスでフロント会計に従事した後、税理士事務所勤務を経て、1996年池田税務会計事務所を独立開業。
    相続においては、温厚で誠実な対応にクライアントから篤い信頼が寄せられている。相続セミナーをはじめ、各種経営セミナー講師としても活躍。監修書に『よくわかる相続・贈与の事典』(成美堂出版)がある。

    著者紹介

    連載争続トラブルを防ぐ――相続の基礎知識

    本連載は、2015年12月17日刊行の書籍『50歳からの相続・贈与の本』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

    50歳からの相続・贈与の本

    50歳からの相続・贈与の本

    池田 俊文

    駒草出版

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