今回は、認知した「愛人の子ども」には財産を遺せるかどうかを見ていきます。※本連載は、池田税務会計事務所の代表税理士の池田俊文氏の著書『50歳からの相続・贈与の本』(駒草出版)の中から一部を抜粋し、大切な家族と財産を守るための相続や贈与に関する法律知識や税金知識を幅広く紹介します。

嫡出子、非嫡出子を問わず財産は平等に相続させられる

私のもとに次のようなご相談がありました。

 

《妻との間に長女、そして婚姻関係はないが夫婦同然の女性との間に長男(認知済み)がいます。私が死んだ場合、長女と同じように、婚姻関係がない女性との間の長男にも財産を相続させることができるか心配です。どうしたらいいでしょうか?》

 

このような家庭の場合、婚姻関係のある妻との間に生まれた長女を嫡出子、愛人との間に生まれた長男を非嫡出子と言います。現在の民法では、嫡出子、非嫡出子を問わず平等に財産を相続することができます。

 

しかし、もし愛人との間に生まれた長男を「認知」していなかった場合、愛人との間に生まれた長男に相続権はありません。財産を渡したい場合には遺言書を遺すしかありません。

 

遺言書には、「○○銀行○○支店の遺言者名義の定期預金(口座番号×××)の額を遺贈する」などと財産を特定し、トラブルにならないように作成します。ちなみに、認知していない長男に財産を遺す方法として、長男に毎年お金を贈与して、長男を保険契約者、父親を被保険者、死亡保険金受取人を長男とする方法で財産を渡す方法もあります。

 

【図表1 愛人との間の子を認知済みの場合】

全血兄弟姉妹と半血兄弟姉妹では相続する割合が異なる

平成25年12月5日の民法改正により、以前までは非嫡出子の相続分は嫡出子の相続分の2分の1でしたが、平成25年9月5日以後に開始した相続について嫡出子の相続分と同等となりました。ただ、係争中のものは、平成13年7月1日以後に開始した相続についても相続分の取り扱いは同等となります。

 

普通生活している上では問題にしていないことでも、こと相続に関しては血の繋がりは非常に大事な問題となります。

 

誰が相続人になるかは民法で決まっているとお話ししましたが、今日では結婚、離婚、再婚と人間関係が複雑になってきています。民法では、兄弟を全血兄弟姉妹と、半血兄弟姉妹とに分けて考えています。

 

全血兄弟姉妹:父親と母親が同じである兄弟姉妹のこと。

半血兄弟姉妹:父・母どちらか一方だけを同じくする兄弟(異母兄弟・異父兄弟)のこと。たとえば、先妻の子と後妻の子の関係。

 

父親や母親が亡くなった場合の相続においては、全血であろうと半血であろうと、共同相続人である兄弟姉妹との間に相続分の区別はありません。しかし、被相続人に子どもがおらず、両親も既に亡くなってしまっている場合は、被相続人のすべての兄弟姉妹が同順位の相続人となります。

 

この場合、全血兄弟姉妹と半血兄弟姉妹では相続する割合が異なり、この時の相続分は、半血兄弟姉妹は全血兄弟姉妹の2分の1となります。

 

このように相続分に違いはあるにしても、半血兄弟姉妹には相続権がないと思っている方がいらっしゃいますが、相続権のある半血兄弟姉妹が参加しない遺産分割協議は無効となるので注意が必要です。

 

【図表2 半血兄弟姉妹の場合】

本連載は、2015年12月17日刊行の書籍『50歳からの相続・贈与の本』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

50歳からの相続・贈与の本

50歳からの相続・贈与の本

池田 俊文

駒草出版

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