無駄なものになる可能性が高い「マイナスの情報」
情報といえば、インターネット、テレビ、新聞、雑誌などから得る「知識」のことを指すと思っている方が多いようです。しかし、未来予測の力を持つ人間にとっては、それだけでは役に立つ情報とは見なしません。
一口に情報といっても、そこには役に立つ情報と何の役にも立たない情報があります。世の中に広く流布しているのは、むしろマイナスになる情報のほうが多いように感じます。これは私の持論ですが、マイナスの情報は、むしろ無益で無駄なものになる可能性が高いと思います。
マイナスの情報とは何でしょうか。それは、その情報を見ると悲観的になったり、ネガティブになってしまう情報です。映画を見て、ポジティブな気持ちになる映画とネガティブな気持ちになってしまう映画があるのと同じことです。
投資の世界では、ネガティブな情報を持つのは避けるべきです。なぜなら投資は、どんなに努力したとしても、最後は運に左右される、そういうものだからです。投資の世界で勝ち残る人は、最終的には運のいい人です。運のいい人にネガティブな人はいません。
運のいい人は、基本的には楽観主義者です。私は、人からよく底抜けに明るいと評されることがありますが、それは日々ポジティブに生きているからです。ポジティブマインドがあり、かつ楽観主義の人には、最後にチャンスが回ってきます。
根拠を疑う人もいるかもしれませんが、それは厳然とした事実です。歴史をさかのぼれば、悲観主義の人にはチャンスは訪れず、短い間に滅亡する傾向は強く表れています。
楽観主義が倒産直前の会社に奇跡を起こした!?
具体的な例として、ここではモスバーガーの創業者、櫻田慧さんのケースをご紹介しましょう。櫻田さんは、日興証券を脱サラした元証券マンでした。
一九七二年、低価格路線のマクドナルドの向こうを張り、高価格・高品質のハンバーガーショップを創業した櫻田さん。もちろん成功を確信していたので、サラリーマン時代の退職金をすべてつぎ込んで起業したといいます。
しかし、板橋区の成増にオープンした第一号店には、まったくお客さんが来なかったのです。何ヵ月間続けたのか、確かなことはわかりませんが、あまりの不入りに、倒産寸前という状態に陥ってしまいました。
退職金も底を尽き、あとは座して死を待つのみ、というところまで追い込まれたとき、櫻田さんは変わった行動に出ます。なんと、お住まいのマンションを売却してしまい、その売却代金で会社の負債を補填するのではなく、ご家族みなさんでハワイに行くことにしたというのです。
脱サラに失敗した。
↓
虎の子の退職金もなくなってしまった。
↓
でも、倒産して死ぬわけではない。
↓
それなら、家族でいい思い出をつくろう。
櫻田さんはそうお考えになったのかもしれません。創業するにあたっては、奥さんをはじめ、家族一丸となってモスバーガーの経営を懸命に手伝ったそうです。その労に報いるためにも、最後に気分転換を兼ねて旅行に行こうと考えられたのです。
ハワイには、一週間ほど行かれていたそうです。日本に帰国し、空港に降り立って店に電話をすると、従業員の興奮した声が聞こえてきたといいます。
「社長、お客さんがいっぱい来ています!」
結果的に、そこが会社の岐路になりました。櫻田さんはそこまで計算なさってハワイに行かれたわけではありません。しかし、ハワイに行くことなくその時点でモスバーガーをたたんでいたら、そこで倒産していたのです。
これを相場に置き換えてみましょう。ハワイに行く直前が、櫻田さんの人生の大底だったことになります。大底を打ったあとは上昇しかないのですから、どんどんお客さんが来た。ハワイ旅行はやぶれかぶれの行動のように見えますが、櫻田さんの楽観主義によって、再びチャンスを得ることに成功したという見方を私はします。
相場では大底で終わる人と、大底を機に買いに走る人で運命が分かれます。櫻田さんの逸話は、それとまったく同じです。私は、こういう「情報」を参考にするのです。