ランダムに拾った情報を自分の視点で分別する
未来予測に役立つ情報の集め方のセカンドステップは、独自の視点で役立つ情報を絞り込んでいくことです。この独自の視点は、人によって異なります。連載をお読みいただいている読者のみなさんは、社会人としてそれぞれの専門分野をお持ちだと思います。まずは自分の仕事の周辺にあることに絞り込んでみることです。
私の場合は長いこと投資のプロを目指しています。投資における未来予測に役立つ情報は何か、という視点で探しているわけです。ランダムに拾った情報を、自分の視点でスクリーニングし、自分でいい情報だと思うものを選別して頭の中にファイルするのです。あるいは、自分の趣味、興味があるジャンルに絞ってもいいと思います。
情報の集め方をたとえると、海の中に大きく網を広げるようなものです。網を引き上げると、その中には鯛やヒラメ、エビや貝がかかっています。そのすべてを食べる必要はありません。エビや貝が好きではない人は、鯛とヒラメだけを選んでほかは捨ててしまえばいいのです。
それを繰り返しているうちに、鯛やヒラメを取るにはどのあたりに網を投げればいいかということがわかるようになってきます。その段階まで進めば、情報のプロに一歩近づいたことになります。
投資の世界では他人とは異なる独自の視点が大切
剣の世界にいろいろな流派があるように、投資にもいろいろな手法があります。どの流派や手法を選ぶかということについて、正解はありません。まずは自分のライフスタイルに合った流派や手法を選ぶことが、情報の集め方や選択の仕方の出発点なのです。本書「はじめに」にも少し書いた投資のプロフェッショナルであるウォーレン・バフェットは、自分のライフスタイルに基づいた考え方や手法を選択しています。
アメリカ社会に育ち、アメリカ経済をベースとしているバフェットは、長年培ったライフスタイルをベースにアメリカの会社の株に投資しました。とくに、人々が必ず使うような商品をつくっている会社に注目した結果、コカ・コーラの株を買い、ひげそりのジレットの株を買って成功したのです(もちろんそれだけではありませんが)。
バフェットが成功しているからといって、バフェットをそのまま真似しても意味がありません。バフェットの手法は、日本で生まれて日本で育ち、日本経済をベースに生活しているあなたの視点とはマッチしない可能性が高い。「オマハの賢人」といわれるバフェットの手法であっても、一つの考え方として参考にすべき考え方にすぎないのです。
投資の世界では、他人とは異なる独自の視点を持つことが何よりも大事です。なぜか。他人に付和雷同していては、絶対に儲からないからです。私もバフェットの考え方を参考にはしますが、スガシタ流の独自の視点をもっています。
読者のみなさんには、日本社会の特徴を知り、日本が置かれている現状を把握し、そのうえで独自の視点をもつことを心がけていただきたいと思います。そのためには、テレビや新聞で流されているような情報だけでは十分とは言えません。
私は毎日新聞を七紙読み、雑誌や書籍、テレビなどから情報を集めています。さらに人に会うことで得る情報もあります。大量の情報に触れ、そのなかで選択することにハードルを感じる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、慣れてくると、読まなくてもいい情報がわかるようになります。むしろ、自分が読みたい情報を自分でわかっているので、それを探すためにあらゆる媒体をチェックしているという感覚でしょうか。
まだ慣れていないみなさんは、情報源をすべて当たり、その中から自分にとって大事な情報を「引き抜く」という発想になってしまうと思います。しかし、それはまったく逆の発想です。不要なものは最初から見ません。欲しいものだけに「向かっていく」という発想で臨むのです。
欲しいものさえ手に入れば、新聞などはさっさとゴミ箱に捨ててしまいます。そのときに必要だと思わなくても、いつか役に立つかもしれないと取っておいても、永遠に必要になることはありません。潔く切り捨てて構いません。
私自身、このやり方でもう長いですが、新聞七紙といっても二〇分くらいで読んでしまいます。貴重な時間を情報収集にだけ割くのは、もったいないです。