(※写真はイメージです/PIXTA)

「タンス預金、うちの実家も……」思い当たる人も多いのではないでしょうか。現金主義の高齢親世代にとって、タンス預金は長年の習慣かもしれません。しかし、時代は変わりより安全で効率的な資産管理の方法が数多く存在します。親御さんの大切な資産を守るためにも、年末年始に一度、一緒に話し合ってみてはいかがでしょうか。本記事では、伊藤さん(仮名)の事例とともにタンス預金のリスクについて、FP事務所MoneySmith代表の吉野裕一氏が解説します。

子「実家より、現金を相続したい」

いまだに低金利でも預金口座にお金を預けている人もいますが、現金を手元で保管しているという人も少なくないようです。前項でも説明したように、お金の価値は目減りしていくことが考えられます。額面だけみれば、マイナスになっていないと感じてしまいますが、実質の貨幣価値をみると、インフレによる目減りが考えられます。

 

今回のケースでは、相続が発生したときに相続税が発生していませんが、現金で持っていることで、ほかの財産と合わせると基礎控除を上回る可能性もあります。こうしたお金を保険にしておくことで、被相続人の人数×500万円がみなし相続財産とされ、非課税に加算されることになり、非課税の枠が増えることになります。

 

今回、伊藤さんは単独相続だったことで、争族になることはありませんでした。もし相続人が複数いる場合には、不動産と現金などを分割する際に揉めるケースも多く、特に相続税が課税されないケースで増えているようです。

 

令和4年度に遺産分割で裁判所に持ち込まれた件数は1万2,982件あり、容認・調停成立となったのは約半数の6,858件です。成立となった相続財産の価額を見ると、5,000万円以下が76%と4分の1以上を占めています。

 

もう誰も住まない実家の不動産を相続するより、現金を相続したいと思う人が多いようです。しかし、相続税が課税されないからと相続対策をしていないと「相続」が「争族」へとなってしまう可能性についても考えておく必要があります。伊藤さんは相続した財産の使い道に関して、

 

・子どもの教育費に一部を活用

・iDeCoを利用して老後資金の準備に充当

・万が一の際に子どもへ渡すお金として子ども2人を受取人にした生命保険に加入

 

などを行うことにしました。母の遺したお金を有効に使いたいと考えているようです。

 

〈参考〉

総務省「消費者物価指数(CPI)結果」2020年基準長期時系列データ
https://www.stat.go.jp/data/cpi/1.html

裁判所「令和4年度 司法統計年報 3 家事編」遺産分割事件数
https://www.courts.go.jp/app/files/toukei/659/012659.pdf

 

 

吉野 裕一

FP事務所MoneySmith

代表

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