(※写真はイメージです/PIXTA)

「タンス預金、うちの実家も……」思い当たる人も多いのではないでしょうか。現金主義の高齢親世代にとって、タンス預金は長年の習慣かもしれません。しかし、時代は変わりより安全で効率的な資産管理の方法が数多く存在します。親御さんの大切な資産を守るためにも、年末年始に一度、一緒に話し合ってみてはいかがでしょうか。本記事では、伊藤さん(仮名)の事例とともにタンス預金のリスクについて、FP事務所MoneySmith代表の吉野裕一氏が解説します。

どんどんと減っていくお金の価値

伊藤さんの母親は、年金を受け取るようになっても、なにかあったときのためにと、高齢になっても普段から節約しながら生活を送っていたようでした。

 

1970年以降、日本は高度成長期で、働いていれば収入が増えるという時代がありました。この時代を築いた人たちが、65歳を超えて年金生活を送るようになっていますが、インフレーション(インフレ)やデフレーション(デフレ)ということに関しては意識していない人も見受けられます。

 

総務省の消費者物価指数でみると、1970年から2000年までの30年間では、インフレ率が315%となっています。これは物価が3倍以上になっているという見方もできますが、貨幣価値が3分の1以下になったともいえます。同じものを買おうとしても、30年後ではお金を3倍以上払わなくてはいけないのです。

 

1991年以降はバブル崩壊ということもあり、貨幣価値が上がるデフレが起こりました。
しかし1994年から2024年の30年間では、およそ113%のインフレが起こっています。失われた30年といわれるなかで、わずかながらもインフレは起こっていることがわかります。

 

伊藤さんの母親も、インフレについては意識することなく、現金を貯めれば資産を守ることになると思い込んでいたようです。ただ、2020年の新型コロナウィルスの感染の広がりで、経済が疲弊したことによる経済支援や金融緩和から、世の中に出回るお金の量が増えたことで、世界的なインフレが起こっています。日本でも、インフレによるコスト高やエネルギー資源の高騰により、値上げラッシュが続いています。

 

タンス預金が遺されると…

また、タンス預金で考えなくてはいけないのが、相続に関する問題です。相続税は、3,000万円と相続人の人数×600万円まで課税されることがありません。

 

今回のケースでは父親の相続のときには、母親と隆さんの2人が相続人だったので、

 

3,000万円+600万円×2人=4,200万円

 

まで非課税となりました。不動産と現預金を合わせても、課税対象にはならなかったようです。

 

一方、今回の母親の相続では、

 

3,000万円+600万円×1人=3,600万円

 

となります。今回も相続税の課税まではならなかったようですが、そのほかの財産があった場合には、課税されることも考えておかなくてはいけません。

 

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