相手が合意しても要注意…離婚調停中にやってしまうと「不利」になりやすいこと【弁護士が解説】

相手が合意しても要注意…離婚調停中にやってしまうと「不利」になりやすいこと【弁護士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

離婚調停に半年ほどの期間がかかることは珍しくなく、なかには1年近い期間がかかることもあります。離婚調停が長期におよぶと、そのあいだに別居したいと考えることもあるでしょう。では、離婚調停中に別居すると調停において不利となるのでしょうか? また、離婚協議中に別居をする際は、どのような点に注意する必要があるでしょうか? 本記事では、離婚調停中の別居についてAuthense法律事務所の白谷英恵弁護士が解説します。

離婚調停中に別居することは可能?

離婚調停中に、配偶者と別居をすることは可能です。民法は、「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」として夫婦の同居義務を定めています(民法752条)。しかし、離婚調停に至っている以上はすでに夫婦関係は破綻しているものと考えられ、別居すること自体が直ちに法律違反となるわけではありません。

 

ただし、相手の承諾を得ることなく一方的に家を出た場合などは、離婚調停で不利となる可能性があります。これについては、次で改めて解説します。

離婚調停中に別居が不利となるケース

離婚調停中の別居が不利となるのは、特に理由がないまま、相手の承諾を得ることなく一方的に家を出た場合です。相手の承諾を得ることなく一方的に家を出た場合は離婚原因の1つに挙げられている「悪意の遺棄」にあたる可能性があり、離婚調停で不利となる可能性があります(同770条)。

 

同様に、自分が出ていくのではなく、家の鍵を変えるなどして相手を家から閉め出して別居に至った場合も、悪意の遺棄などに該当する可能性が高いでしょう。

離婚調停中の別居が不利となりづらいケース

離婚調停中に別居をしたからといって、必ずしも離婚調停において不利となるわけではありません。ここでは、離婚調停中に別居しても不利となりづらいケースを4つ紹介します。ただし、実際はケースバイケースである側面も強いため、自分1人で判断せず、あらかじめ離婚問題を取り扱う弁護士へ相談するとよいでしょう。

 

1.双方が合意して別居した場合

1つ目は、夫婦の双方が合意して別居に至った場合です。合意をして別居した場合は悪意の遺棄には当たらず、離婚調停において不利とはなりません。合意のうえで別居する場合は相手から悪意の遺棄であると主張されてしまわないよう、合意書などを取り交わしておくようにしてください。

 

ただし、相手が離婚したがっており自分は離婚をしたくない場合は、別居に応じるかどうかを慎重に検討したほうがよいでしょう。なぜなら、別居期間が長くなると、調停が不成立となり裁判へと移行した場合において、裁判所の判断で離婚が認められやすくなる可能性があるためです。

 

2.離婚原因が相手のDVなどによる場合

相手のモラハラやDVなどに耐えかねて家を出た場合は、原則として悪意の遺棄には該当せず、離婚調停において不利とはなりません。ただし、相手からDVなどを否定され悪意の遺棄にあたるなどと主張されるリスクは残ります。

 

そのため、相手のモラハラやDVを原因として家を出たい場合は可能な限りモラハラやDVの証拠を残すとともに、離婚問題に強い弁護士へ相談することを勧めます。

 

3.すでに夫婦関係が破綻している場合

すでに夫婦関係が破綻している場合は、別居をしても悪意の遺棄であると判断される可能性は低いでしょう。ただし、自分では夫婦関係が破綻していると考えていても、相手は破綻には至っていないと考えている可能性もあります。

 

特に、自分は離婚したいと考えている一方で相手が離婚を拒んでいる場合には、注意しなければなりません。そのため、相手と別居についての合意ができない場合は、あらかじめ弁護士へ相談したほうがよいでしょう。

 

4.転勤などやむを得ない理由による場合

離婚調停中に、転勤や親の介護、病気の療養などのやむを得ない事情によって別居せざるを得なくなることもあるでしょう。この場合は、悪意の遺棄などと判断される可能性は低く、離婚調停において不利となる可能性は低いといえます。

 

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