(※写真はイメージです/PIXTA)

死別や離婚により、ひとり暮らしとなった高齢親。子どもとしては心配ではありますが、自身の生活もあるなか、そう頻繁に様子を見に行くことは難しいかもしれません。親としても、困ったことがあってもなかなか子どもには頼りにくい事情もあるようで……。本記事では、美智子さん(仮名)の事例とともに、ひとり暮らしの高齢親の注意点について、波多FP事務所の代表ファイナンシャルプランナーである波多勇気氏が解説します。※プライバシー保護の観点から、相談者の個人情報および相談内容を一部変更しています。

拒絶の裏にある母の思い

美智子さんが娘を拒絶した理由――それは複雑な思いが絡み合った結果でした。

 

1.経済的不安

「娘に自分の苦しい生活を知られるのが怖いんです」 

 

電気代を節約するため、部屋はいつも薄暗い。夕食は半額になった総菜がほとんど。そんな生活を見られたくない。娘に心配されることがなにより嫌でした。夫の遺した金融資産があるものの、今後のタワーマンションの維持費を考えると簡単には手を付けられずにいます。

 

2.プライド

「助けが必要だと思われたくないんです」 

 

美智子さんは「自立した母親」でいたいと強く願っていました。タワーマンションに住むことで、自分の誇りを保っている。しかし、娘に頼ることで、その誇りが崩れるのを恐れていました。 

 

3.孤独と心理的な壁

「この家に人を入れるのは、正直怖いんです」 

 

美智子さんは、タワーマンションの生活が孤立感を強めていると感じていました。ほかの住人は若い世代や家族連れが多く、交流はほとんどありません。一人で過ごす時間が長い中で、生活空間に他人を入れることに強い抵抗感を抱くようになっていました。 

 

4. 娘への気遣い

一見冷たい態度にも見えますが、拒絶の根底には娘への愛情がありました。 娘が負担に感じるのではないか。その思いが、結果として距離を生んでいました。 

解決策 

こうした問題に対し、解決策はあるのでしょうか? 

 

1.住まいの見直し 

美智子さんにとってタワーマンションは大切な場所ですが、維持費が負担なら賃貸に出す方法もあります。郊外に引っ越せば、月3~5万円の余裕が生まれる可能性があります。また、リバースモーゲージを活用し、自宅を担保に生活費を確保する選択肢もあります。 

 

2.家族間の対話 

娘との対話を増やし、無理のない形で助けを借りることが大切です。「助ける」ではなく「一緒に楽しむ」提案が心理的な壁を取り除く鍵となります。 

 

3.公的支援や地域のコミュニティ活用 

孤独を感じる美智子さんにとって、地域のシニア向けプログラムや自治体の支援は大きな助けとなります。生活費を軽減するための補助金や住宅支援制度も有効です。 

 

次ページ子どもに迷惑をかけたくない高齢親

※プライバシーのため、実際の事例内容を一部改変しています。

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