老人ホーム入居を考える際のポイント
Aさんの場合、施設へ支払う金額の目安だけを事前に確認しており、支出額全体としての予算を確認していなかった点が悔やまれました。
事前にファイナンシャルプランナーなどの専門家を交え、生涯における予算を確認し、月々の予算を設けていれば、Aさんも利用の際に意識することができたでしょう。また、資産が減りすぎてしまう前に、Bさんが止められた可能性があります。
図表1のとおり有料老人ホームには3つの種類があります。
元気なうちから入居するものも多く、早めの検討が大切になる一方、入居期間中の費用には一定の生活支援サービスがパッケージされており、別途必要になる費用もさまざまあり、生活費は確実に底上げされることとなります。
場合によっては不要な生活費を支払ううえ、資産を減らしてしまうことにもなりますから、ご自身の日ごろの生活費の水準と比較したうえで、金額差に見合う価値はあるのか、はかったうえで検討するといいでしょう。
なお、入居の際一時金を支払う場合は、入居から3ヵ月以内に契約が終了した際、入居期間中の居住費用を除いた金額が返還されることが法律で定められています。しかし、3ヵ月を超えるとAさんのように前払金が初期償却されることもあります。償却された部分は返金されないため、早期で退去する場合は大きな損失となる可能性があります。償却方法を確認し、入居一時金を払う場合と払わない場合の総費用を比較したり、退去時期をシミュレーションしておくなどして、家計への影響をしっかり理解しておく必要があるでしょう。
不測の事態も考慮
前払金を支払う前には保全措置についても確認しておきましょう。万が一倒産した場合に備えて、前払金には保全措置が義務づけられていますが、厚生労働省の資料によれば、前払金を徴収している有料老人ホームのうち、2.3%の52件の施設では保全措置が講じられていないことがわかっています(令和5年6月30日時点)※2。
保全措置が講じられていなければ、万が一倒産した場合に返金を受けられない可能性もあります。東京商工リサーチによれば、介護事業者(老人福祉・介護事業)の倒産は2024年10月に年間最多を更新し、上半期では過去最多を記録、有料老人ホームも6件と倍増しているといいます。
施設に見学に行く際には、利用者の平均的な支払い額を聞くなど家計への影響を十分にはかったうえで、重要事項説明書の説明をしっかりとうけ、施設の経営状態などについてもできる限り確認するようにしましょう。
〈参考〉
※1 厚生労働省 特定施設入居者生活介護・ 地域密着型特定施設入居者生活介護 内
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001131790.pdf
※2 厚生労働省 「令和5年度有料老人ホームを対象とした指導状況等のフォローアップ調査(第15回)」結果
https://www.mhlw.go.jp/content/12304250/001268841.pdf
※3 有料老人ホームの指導監督の手引き(2訂版) 令和6年3月 公益社団法人 全国有料老人ホーム協会
内田 英子
FPオフィスツクル代表
ファイナンシャルプランナー
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