年金月20万円の75歳母、父を亡くし抜け殻に。死亡保険金3,000万円で「高級老人ホーム」に入居、笑顔を取り戻すも…“お金は問題ない”はずが、長女が退去を懇願のワケ【FPが解説】

年金月20万円の75歳母、父を亡くし抜け殻に。死亡保険金3,000万円で「高級老人ホーム」に入居、笑顔を取り戻すも…“お金は問題ない”はずが、長女が退去を懇願のワケ【FPが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

厚生労働省の資料(※1)によると2000年以降、有料老人ホームの利用者数は右肩上がりに増え続けており、2021年には2000年比で16倍になりました。有料老人ホームは元気なうちから入るものが多いですが、早くに入居すると収支変化により、家計の見通しが大きく変わってしまう可能性もあります。本記事では、Aさんの事例とともに、有料老人ホーム入居前の注意点についてFPの内田英子氏が解説します。

老人ホームの落とし穴

想定外だったのは、施設料金の値上げと本人によるレジャー的支出です。施設からの引き落としは当初月18万円程度でしたが、4ヵ月目以降、食費と管理費の2度にわたる値上げにより、請求額は20万円を超えるのが通常となっていました。

 

月によっては22万円程度の引き落としがある月もあり、どうやらレクリエーションと支援サービスの利用料がかさんでいたようでした。Aさんは入居後、さまざまなレクリエーションに積極的に参加していました。

 

また、持病があったため、週に1回程度かかりつけ医のもとに通院しており、その都度付き添い費用やタクシー代などがかかっていたのでした。Aさん自身が引き出している金額もありました。月2〜3万円程度の定期的な引き出しです。

 

Aさんに尋ねると、通院時の交通費のほか、入居後、施設で菜園を借りて家庭菜園を始めており、菜園を利用する際に必要となる道具や苗、肥料などの材料を購入するために使っていたとのことでした。

 

あわせて電気代や通信費などの費用は別途個人で契約となっており、これらの金額を合わせると、毎月の支出額の水準は約27万円であることがわかりました。入居前の自宅での生活では年金で暮らせて毎月数万円の黒字がある状態でしたから、生活費が約10万円上がった計算でした。

 

一方、現在の施設の契約内容を確認したところ、途中で退去した場合は入居一時金として支払った家賃のうち、15%は初期償却され返金されないものの、1,500万円返金を受けることができることがわかりました。とはいえ返金されない金額は約1,100万円。大きな金額に迷われましたが、このまま日がたてば、預金残高とともに返金額もさらに減少することが見込まれます。自宅を不動産会社に買い取ってもらうことも検討しましたが、買取価格は安く、今後の見通しを変えられる金額ではありませんでした。

 

「ごめんお母さん、やっぱり引っ越してほしい」Bさんは楽しそうな母親に、仕方なく頼み込みました。結局、Aさんはわずか1年で老人ホームを退去することになったのです。

 

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