会社は大きく分けて2つの類型がある
設立できる会社の種類は、会社法で、①株式会社、②合名会社、③合資会社、④合同会社の4種類が認められています。株式会社以外の会社を「持分会社」といいます(会社法575条1項)。
会社を設立する際には、まずどのような形態で会社を作るかを選ぶ必要があります。日本でよく利用される会社形態は、主に「株式会社」と「合同会社」です。この2つはそれぞれ特徴があり、どちらが適しているかは、事業内容や経営スタイルによって異なります。
株式会社とは?
株式会社は、日本で最も一般的な会社形態で、多くの企業が採用しています。出資者(株主)が株式を持ち、取締役が経営を担う仕組みが特徴です。
【特徴】
1. 株式の発行による資金調達
株式を発行することで、多くの出資者から資金を集めることができます。この仕組みにより、大規模な事業や成長性の高いビジネスに適しています。
2. 所有と経営の分離
出資者である株主と、経営を担う取締役が分離されているのが大きな特徴です。株主は経営に直接関与せず、経営の実務は取締役が担当します。この仕組みにより、専門性の高い経営が可能になります。
3. 社会的信用の高さ
「株式会社」という名称は、取引先や金融機関に対して高い信頼性を与えます。求人や規模の大きな取引、融資を受ける場合など、株式会社であることが有利に働く傾向にあります。
【メリット】
1. 信頼性の向上
株式会社という形態自体が、社会的な信用を高めます。求人や大きな取引、金融機関からの融資が必要な場合に特に有利です。また「代表取締役」と名乗ることができるのは株式会社だけです。
2. 資金調達の自由度
株式を発行して資金を集められるため、外部からの資金調達が容易です。スタートアップやベンチャー企業が成長する際には非常に有効な仕組みです。
3. 柔軟な経営体制
取締役会や株主総会を通じて、大きな意思決定が可能です。また、経営者を専門家に委託することで、高度な経営戦略を実現できます。
【デメリット】
1. 設立費用の高さ
株式会社を設立するには、登録免許税や定款認証費用などが必要です。合同会社と比較すると初期費用が高くなります。
2. 運営コストの負担
株主総会の開催や決算公告が法的に義務付けられており、運営に手間とコストがかかります。
合同会社とは?
合同会社は、2006年の会社法改正で導入された比較的新しい会社形態です。出資者全員が経営に参加する仕組み(=所有と経営の一致)を特徴とし、資産管理会社、小規模事業やスタートアップに適しています。
【特徴】
1. 所有と経営の一致
出資者がそのまま経営者となるため、経営の意思決定が迅速に行えます。小規模ビジネスや、柔軟な経営を求める事業に向いています。
2. 自由な運営ルール
定款で自由に運営ルールを決めることが可能です。例えば、利益配分の方法も定款で独自に設定できます。
3. 設立が簡単
株式会社と比べて設立費用が安く、手続きも簡単です。登録免許税が安く、定款認証も不要です。
【メリット】
1. 設立コストの低さ
設立時の登録免許税は6万円(株式会社は15万円)と、非常に安価です。小規模な事業を始める際の負担が少なく済みます。
2. 運営の簡便性
株主総会や決算公告の義務がないため、運営コストを抑えられます。日常的な業務に専念しやすい点が魅力です。
3. 意思決定の迅速さ
出資者全員が経営者として意思決定に関わるため、迅速な対応が可能です。
【デメリット】
1. 信用力の課題
「合同会社」はまだ知名度が低いため、取引先や金融機関によっては信頼性に欠けると見なされる場合があります。また、株式会社であれば「代表取締役」という肩書が使える一方、合同会社では、役員の肩書は「代表社員」となります。一部には、“代表取締役に比べ、代表社員という肩書はなんだかパッとしない”という声も…。
2. 資金調達の制限
株式発行ができないため、大規模な事業資金を外部から調達するには不向きです。自己資金や融資に頼る必要があります。
選ぶなら株式会社か、合同会社か?
株式会社と合同会社を選ぶ際には、次の3つの観点を検討するとよいでしょう。
①事業規模
将来的に事業を大きく拡大したいのか、それとも小規模で運営したいのか。
②資金調達の必要性
外部からの大規模な資金調達が必要なのか、自己資金や融資で運営可能なのか。
③社会的信用の重視度
取引先や金融機関との関係構築にどれだけの信用力が必要か。
◆株式会社が向いているケース
1. 大規模な事業や将来の成長を目指す場合
株式会社は、株式を発行して資金を調達できるため、大規模な事業や成長性の高いビジネスに適しています。特に、上場を目指す場合は株式会社一択です。
2. 社会的信用が重要な場合
「株式会社」という名称は、取引先や金融機関に信頼を与えます。大手企業や金融機関と取引する予定がある場合には、株式会社を選ぶほうが無難です。
3. 経営と出資を分離したい場合
株主(出資者)は経営に直接関与せず、取締役が経営を担う仕組みのため、外部の専門経営者を迎える場合に適しています。
4. 複数の投資家から資金を集めたい場合
株式を利用して多数の投資家から資金を集めることができるため、大規模な資金調達を計画している場合に有利です。
◆合同会社が向いているケース
1. 初期費用や運営コストを抑えたい場合
合同会社は設立費用が安く、運営に必要な法的手続きも少ないため、初期費用やランニングコストを抑えたい事業に向いています。
2. 小規模な事業を運営したい場合
出資者全員が経営に関与するため、少人数で迅速な意思決定が必要な事業に適しています。個人事業主から法人化を目指す場合にも適した選択肢です。
3. 柔軟な利益配分を行いたい場合
合同会社は定款で利益配分を自由に設定できるため、出資比率にとらわれず柔軟な経営が可能です。
4. 信頼性よりも経営の自由度を重視する場合
一部の取引先では「合同会社」の信用力が株式会社に比べて劣ると見られる場合がありますが、それが特に問題にならない場合には、合同会社の自由な運営が魅力です。
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〈結論〉
●株式会社を選ぶべき人
・大規模な事業展開を視野に入れている
・信用力が重要で、取引先や金融機関との関係構築を重視している
・資金調達を積極的に行いたい
●合同会社を選ぶべき人
・資産管理、小規模事業やスタートアップで、効率よく事業を進めたい
・初期費用や運営コストを抑えたい
・出資者全員で意思決定を迅速に行いたい
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迷ったら株式会社がおすすめ
株式会社と合同会社は、それぞれに特徴とメリットがあります。どちらを選ぶべきかは、事業の規模や目的、経営スタイルによって異なります。事前にしっかりと計画を立て、自身のビジネスモデルに適した形態を選びましょう。
選択に迷った場合、信用力や将来的な事業展開の幅を考慮すると、株式会社を選ぶほうが無難です。特に、初期費用や運営の複雑さを負担できる場合には、長期的なメリットを得やすい選択肢となります。
・信用力が高い
株式会社は「信頼される会社」というイメージを持たれることが多いため、取引先や金融機関との関係を構築しやすいです。
・選択肢を広げられる
株式会社は、成長ステージや事業環境が変わったときにも柔軟に対応できます。特に、資金調達や組織変更が必要になった場合にその強みが発揮されます。
・将来の選択肢が広がる
現時点では小規模な事業でも、将来的に事業拡大を考えている場合は株式会社を選んでおくほうが無難です。
私は、迷うのであれば株式会社のほうがよいでしょう!といつも皆様にアドバイスしています。
加陽 麻里布
司法書士法人永田町事務所 代表司法書士