(※写真はイメージです/PIXTA)

「会社のカネは俺のカネ」と考えている“よからぬ経営者”がやりがちなのが「経費の使い込み」。一口に経費の使い込みといっても、多岐にわたる手法があります。そして、発覚した際の処罰の内容もさまざまです。今回、経営者による経費の使い込みの手法と防止策について、税理士法人松本が詳しく解説します。

社長による経費使い込みが疑われる場合の流れ

経理担当者や他の従業員に限らず、社長であっても、横領行為があれば刑事告訴や民事訴訟により損害賠償を求めることが可能です。

 

責任を追及したり法的措置を取ったりする際には、横領の事実を裏付ける十分な証拠、被害額の詳細な確認が不可欠です。

 

具体的に、社長の経費使い込みが疑われる場合の流れについては、以下の2つが挙げられます。

 

・経費使い込みの事実関係を調べる

・経費使い込みした社長本人に確認する

 

それぞれの流れについて解説していきます。

 

経費使い込みの事実関係を調べる

社長による横領の疑いが浮上した場合、その事実の有無や被害額を確認する必要があります。

 

具体的には、以下のような調査が実施されます。

 

・領収書や会計記録の照合

・防犯カメラの映像確認

・取引先や従業員へのヒアリング

・コンピュータ内のデータやメールの履歴の調査

 

特に、パソコン内のデータやメールの履歴に関しては、プライバシーの問題やデータの消去といった障害があり、個人での調査は困難です。そのため、法的に正当な手続きを経て調査をおこなう専門家に依頼することが推奨されます。

 

さらに、個人で行う調査は、客観性や正確性が欠ける可能性があるので、データに基づく証拠の収集は専門の調査機関に依頼するのが望ましいといえます。

 

経費使い込みした社長本人に確認する

事実確認が進み、証拠がある程度揃った段階で、横領の疑いがある社長に対して事情聴取をおこないます。

 

以下のように、あらかじめ質問事項を整理し、聴取の目的を明確にすることが大切です。

 

・横領の事実について認めるかどうか

・横領の具体的な内容、方法、資金の使用目的

・返済の意思の有無や、具体的な返済方法について

・共犯者の存在や、被害が社内以外にも及んでいるかどうか

 

事情聴取は、少なくとも聴取役と記録役の2人以上でおこない、対象者の発言は詳細に記録するようにしましょう。しかし、証拠が不十分な状態で聴取を行うと、横領を否定されるだけでなく、共犯者による証拠隠滅のリスクも高くなってしまうので、証拠をしっかりと収集しておくことが重要です。

社長の経費使い込みが発覚した際の対応

社長の経費の使い込みが発覚した際の対応については、以下の2つが挙げられます。

 

・刑事告訴

・損害賠償請求

 

それぞれの対応について解説していきます。

 

刑事告訴

被害額が大きい場合には、刑事告訴を検討し、法的手段で加害者の責任を追及することが可能です。

 

刑事告訴とは、被害者が捜査機関に対して具体的な事実を報告し、加害者に法的な制裁を求める手続きを指します。告訴状を警察に提出することで捜査が開始されますが、その際には横領の事実を裏付ける確固たる証拠が必要になります。

 

しかし、社内での調査は中立性が欠けていると見なされる可能性があり、告訴が受理されないリスクがあります。そのため、専門の調査会社に依頼することで、より客観的で信頼性の高い証拠を集めることができます。

 

調査会社は、裁判においても有効とされる書類を作成し、専門的な知識を駆使して証拠の信憑性を高める役割を持っているので、少しでも不安がある方は調査会社に依頼することをおすすめします。

 

損害賠償請求

社長が業務上の不正行為として横領を行った場合、民事訴訟として損害賠償を請求することが可能です。

 

しかし、業務上の横領は他の横領行為に比べ、被害額が大きくなることが多く、損害回収が困難なケースが見られます。一般的には退職金の支払い停止や、退職後に再就職した先で得ている収入を差し押さえるなどの手段を用いて回収が試みられます。

 

また、損害賠償を求める訴訟を行う際には、横領の事実を立証するための証拠が不可欠です。

 

関係者の証言や関連データの履歴など、証拠となり得るものは全て適切に保管して証拠を確保することが必要です。

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