(※写真はイメージです/PIXTA)

自分の死後における財産の行き先などの意向を記す「遺言書」。ときにはこの遺言書が原因で、遺された家族がもめてしまうことも。本記事では、本田さん(仮名)の事例とともに、被相続人の生前に相続トラブルを防ぐ方法について、FP相談ねっと・認定FPの小川洋平氏が解説します。

法律の壁

そんな本田さんは、どのようにしたら娘に自分の資産をすべて渡すことができるのかを調べていました。妻の外出時を見計らって、まだかろうじて動く上半身を必死で起こし、スマートフォンで検索した情報を次々にチェック。時間をかけて遺言書を作成していきました。

 

まず、現状の法定相続人は妻と娘の2人だけですので、なにも対策せずに自分がこの世を去ったときには、2人に均等に財産が渡されることになります。そして、遺言書を遺すことで娘に全財産を渡すこともできますが、そこで問題になるのが「遺留分」の存在です。

 

遺留分とは、一定の相続人に認められた、最低限の財産を受け取ることができる権利のこと。子供や配偶者などの近親者が対象になっていて、自分の本来の法定相続分の2分の1を最低限受け取ることができる権利のことです。

 

本田さんの場合、全財産は自宅建物と土地を含めて約1億円。この場合、法定相続分は妻と娘でそれぞれ5,000万円ずつです。仮に本田さんが百合子さんに1億円を渡そうと考えた場合に、妻の美代子さんには法定相続分の2分の1の2,500万円を受け取る権利があります。

 

若いころに好き勝手してきた結果とはいえ、妻の態度が許せない本田さんは一銭たりとも渡したくないと考えていました。経営者仲間に紹介してもらった弁護士にメールで相談。「自分が生きているあいだに娘へ財産を贈与したらどうか……」など、自分の考えを弁護士に相談しましたが、生前の贈与も遺産分割の対象として考えられるため、難しいとの答えが。生命保険であれば、保険金は受取人固有の財産であるため、遺産分割の対象となる財産からは分離されるという方法を教えてもらいました。

 

たとえば、1,000万円を生命保険で残し、保険金として渡すことで相続財産は1億円から9,000万円に圧縮され、法定相続分はそれぞれ4,500万円、遺留分は2,250万円と圧縮することが可能です。しかし、いまから生命保険に加入しようにも健康状態から新たに加入はできないと考え、諦めていました。

 

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