倍率方式で評価するときに注意したい5つのこと
倍率方式による土地の評価は、計算式は簡単ですが、実際に評価するときには注意したい点がいくつかあります。その中から、5つの注意点をお伝えします。
固定資産税の課税明細書は相続があった年のものを使う
「STEP1 準備するものは固定資産税の課税明細書」でお伝えしたように、倍率方式での評価では、固定資産税の課税明細書が必要です。ここで注意したいのは、固定資産税の課税明細書は相続があった年のものを使うということです。たまたま家にあったからといって、古い年度の課税明細書を使わないようにしましょう。
縄伸びしている場合には実際の地積で計算を行う
昔から引き継がれてきた土地では、固定資産税の課税明細書に記載されている地積と実際の地積が異なる、いわゆる縄伸びをしている場合があります。このようなときは、実際の地積で相続税評価額を計算します。固定資産税評価額は課税明細書の地積をもとに計算しているので、固定資産税評価額を実際の地積に対応したものに換算する必要があります。換算には次の算式を使います。
課税地目と現況が異なる場合には現況の地目で計算を行う
固定資産税を課税する上での課税地目と現況の地目が異なる場合があります。このようなときは、現況の地目に基づいて相続税評価額を計算します。たとえば、課税地目が「山林」であるのに対し、現況は「宅地」として使用している場合は、評価倍率表では「山林」ではなく「宅地」の倍率を参照します。
1つの土地でも利用区分が異なる場合には区分ごとに評価を行う
1つの土地であっても、その中で利用区分が細かく分かれている場合があります。このようなときは、利用区分ごとに相続税評価額を計算します。図5のように、固定資産税は「山林」で課税されているものの、その中で「宅地」、「雑種地」、「山林」と利用が細かく分かれていれば、その区分ごとに、現況の地目に基づいて相続税評価額を計算します。
土地の状況は必ず確認!倍率地域の土地でも減額は可能!
※2018年1月以降発生の相続について、「広大地評価」は適用できません。代わりに「地積規模の大きな宅地の評価」が新設されています。※
倍率方式で評価する土地であっても、次のような場合は減額調整することができます。
- セットバック(狭い道路に面していて、建て替えのときに道路に転用するべき部分)がある宅地
- 都市計画道路の予定地
- 広大地(その地域の標準的な宅地に比べて著しく面積が大きな宅地で一定の要件を満たすもの)
単に「固定資産税評価額×倍率」で計算するだけではなく、土地の状況を確認して、減額できるものはしっかりと減額することが重要です。
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