(※写真はイメージです/PIXTA)

亡くなった後に遺された家族に支給されることがある「遺族年金」は、亡くなった人の年金の4分の3の額が支給されると言われています。しかし、実際の支給額は異なることも。いったいどのような仕組みなのか、株式会社よこはまライフプランニング代表取締役の五十嵐義典CFPが、事例をもとに遺族厚生年金のポイントについて解説します。

遺族厚生年金の計算方法

具体的な計算方法を見ていきましょう。

 

Aさん(66歳時点で受給開始前)
老齢基礎年金…81万6,000円(満額)
老齢厚生年金…130万円

合計211万6,000円

 

Bさん(68歳で繰下げ受給開始、65歳開始額より25.2%増額)

老齢基礎年金…95万円
老齢厚生年金…188万円
合計約283万円

 

Bさんは繰下げ受給しているため、65歳開始額より25.2%増額された年金で受給していました。しかし、この繰下げ受給で増えた部分については遺族厚生年金の計算対象となりません。あくまで65歳受給開始・繰下げなしの老齢厚生年金(報酬比例部分)を基礎に計算されます。

 

Bさんの65歳受給開始・繰下げなしの場合の老齢厚生年金は150万円で、その内訳を見てみると報酬比例部分は144万円。この4分の3は108万円となります。この108万円が(ア)の計算方法での差し引き前の遺族厚生年金となります。

 

そして、(イ)の計算方法では108万円×2/3+130万円×1/2で137万円になります。(ア)の108万円より(イ)の137万円のほうが高いため、137万円を基準にAさん自身の老齢厚生年金130万円を差し引きます。

 

結果、Aさんの遺族厚生年金は7万円となり、老齢基礎年金81万6,000円、老齢厚生年金130万円と合わせると218万6,000円になります。

 

単純に報酬比例部分の4分の3となる(ア)の計算方法だと、Aさんに差額支給の遺族厚生年金は支給されなかったところ、(イ)の計算方法により7万円は支給されることになります。

「4分の3」という数字にばかり注目しがちだが…

「共働きで自分の老齢厚生年金があると、遺族厚生年金は減らされてしまうのね……」と、制度や支給のルールを理解したAさん。

 

しばしば「夫の年金の4分の3」といわれている遺族厚生年金。4分の3という数字ばかりが着目されますが、今回のように夫婦共働きの場合は、調整が入ったり、ほとんど支給されないこともあったりします。

 

なお、Aさんが66歳になる直前にBさんが亡くなり、ここで遺族厚生年金の受給権が発生していることから、Aさんは老齢基礎年金と老齢厚生年金の繰下げ受給はできません。

 

Aさんは老齢基礎年金・老齢厚生年金のいずれの年金も66歳になるまで受け取っていませんでしたが、65歳まで約1年遡って、65歳受給開始(繰下げなし)で受給することになります。

 

夫婦共働きもますます増えている昨今、遺族年金についての見直しの議論も進んでいます。夫亡き後の年金生活のことも考えるのであれば、遺族年金の支給のルールをあらかじめ把握しておくことが必要となるでしょう。

 

 

五十嵐 義典

株式会社よこはまライフプランニング代表取締役

特定社会保険労務士/CFPⓇ認定者

 

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