中小企業のM&Aの注意点
大企業では総務、経理部門がしっかり機能し、雇用関係の法令への対応も比較的しっかりしているため、こういった問題は起きにくいものです。一方で、中小企業においては社長が自分の価値基準で法令違反を承知しながら判断していたり、社長にこういった知識がなく法令への適応ができていなかったりといったケースも少なくありません。今回のようにM&Aで会社を買ったあとに財務諸表に載っていない隠れ負債が発覚してしまい、トラブルが起きてしまうケースも。
なかには200万円程度で会社を買える場合もあり、会社員をリタイアし中小企業の経営者に転身といった人もいるのですが、表面的な財務諸表しか見ていないと東さんのような事態も起きてしまいます。
ごく小規模な会社の場合、社長の数字に対する意識が弱く、決算書に載っている現預金と実際の現預金に100万円以上の差があり、財務諸表の内容が信用できない場合も多いものです。また、税金を滞納したままにしているケースなどもあり、後継者が株式の譲渡を受ける直前で多額の消費税の未納が発覚し倒産を免れないような状態になっていたということもあります。
大企業では考えられないようなことですので、見落としてしまいがちなのですが、中小企業を購入する場合には決算書に載っている表面的な情報だけでなく、実際に会社に入って会社の雰囲気や管理体制などをチェックしたり、社会保険労務士や税理士等の専門家からも意見をもらったりしながら会社の問題を明確化することが必要です。
定年後に中小企業経営者になるなら
帝国データバンクが公表する「全国『後継者不在率』動向調査(2023年)」によると、中小企業で後継者の問題を抱える割合は53.9%と、多くの中小企業が後継者不足の問題を抱えていることがわかります。そういった現状からM&Aが今後さらに行われることが予想され、「リタイア後に小さな会社を買って経営してみよう」と思う人も増えてくることでしょう。
しかし、中小企業においては前述のような問題が隠れている可能性もあることはよく理解しておく必要があります。その反面、赤字や業績が芳しくない状態であっても、大企業に比べ仕組化、省人化が行われていないがために起きている問題や、会社のお金の見える化がされていなかったり、経営者が見栄で散財してしまっていたりと、非常に単純な問題のために利益を残せない、お金がないといった場合もあります。改善できる箇所も多いため、タダ同然でそういった会社を買ってブラッシュアップして収益化できる場合もあり、ある意味での面白さを持つのも中小企業のM&Aです。
よくある問題点を理解し、その会社の問題や課題を事前にしっかり見える化しながら購入を検討するようにしましょう。
小川 洋平
FP相談ねっと
ファイナンシャルプランナー
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