(画像はイメージです/PIXTA)

同一月にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合、一定の金額(自己負担限度額)を超えた分を払い戻すことができます。これを高額療養費といいます。申請により医療費の自己負担額を大きく減らすことができる一方で、相続税の課税対象となっています。相続時の高額療養費の申請について、相続専門税理士の岸田康雄氏がやさしく解説していきます。

「高額療養費」はどうやって請求する?

「高額療養費」とは、同一月(1日から月末まで)にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合、一定の金額(自己負担限度額)を超えた分が、あとで払い戻される制度です。

 

医療費が高額になり、高額療養費の払い戻しの対象となる場合は、医療費を支払ってから数カ月後に自宅へ「高額療養費支給申請書」という書類が届きます。

 

その高額療養費支給申請書に住所や氏名、被保険者番号などを記入し、申請を行います。

 

申請の際には、申請者である相続人の本人確認のための身分証明書や口座、また相続人全員分の戸籍謄本も必要となります。戸籍謄本は市役所やコンビニエンスストアで簡単に手に入れることができますが、準備するものも多いので、漏れのないように気をつけてください。

 

書類が準備できたら申請を行います。高額療養費支給申請書を送付してきたところに申請します。被相続人の加入していた健康保険が国民保険や後期医療であれば、地元自治体の健康保険課に、健康保険だった場合は健康保険組合や協会けんぽなどで手続きをします。

 

用意が必要な書類もあり、手間もかかるので面倒だと、高額療養費の手続きはつい後回しにしてしまいがちです。しかし、請求できる期間は2年以内と期限が決まっています。忘れてしまわないうちに、早めに手続きしておくことをおすすめします。

請求限度額はいくら?

ここまで高額療養費の請求方法について説明しましたが、実際に高額療養費をどこまで受け取ることができるのか、疑問に思っている人もいるかと思います。

 

高額療養費とは、ひと月の医療費が一定の上限額を超えた場合、支払った額と上限額の差額が支給される制度ですが、この際の上限額は年収や年齢によって変わります。

 

70歳以上の場合の年収は、「現役並み」「一般」「住民税非課税等」というように分かれているため、被相続人がどこに当てはまるのかがわかれば、大まかな金額が計算できます。

 

仮に、被相続人が75歳以上の住民税非課税世帯であった場合は、ひと月に負担する額の上限が2万4,600円となっています。たとえ医療費が20万円かかったとしても、自己負担の上限が2万4,600円と決まっているため、残りの17万5,400円分は自分の手元に戻ってきます。

 

もし、ひと月に何度も入院したり、手術をしたりした場合は、自己負担の上限が下がる場合もあります。これは「世帯合算」といい、同一世帯で、同じ月に何人か同時にけがや病気で医療機関を受診した場合や、1人で複数の病院に行った際にかかった医療費を合わせることができるのです。

 

ただし、同一世帯全員分の医療費を合算できるものの、年齢によって合算の仕方が変わるため、きちんと確認をするようにしてください。

 

また、12カ月のあいだに3回以上の高額療養費が出された場合、4回目以降は3回目までと比べて、自己負担の上限額が下がる「多数該当高額療養費」というものがあります。万一闘病期間が長引いたときには助かる制度だといえます。

 

しかし、この多数該当高額療養費は、健康保険が変わったときは、該当した月数を通算できなくなるので注意が必要です。

給付されたお金は相続税の課税対象

高額療養費として給付されたお金は相続税の対象となるため、きちんと申告をする必要があります。

 

上述の通り、高額療養費の請求期間は2年以内である一方、相続税の申請期間は、相続の発生から10カ月となっています。亡くなった月が高額療養費の対象であった場合、申請書が届くまでにも数カ月の時間がかかっているため、もし申請書が届いた場合は、早急に手続きをすることをおすすめします。

 

もし、申請が間に合わず、相続税の申告期限が切れてしまった場合は、延滞金がかかるため余計な出費が増えてしまいます。

 

相続が発生すると、さまざまな手続きが必要になるため、つい高額療養費のことを忘れてしまうことがあります。

 

もし不安であれば専門家に相談しながら、ミスのないように進めていくことをおすすめします。

 

 

岸田 康雄
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)

 

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