大別される6種類の書類を準備
相続が発生し、葬儀、四十九日の法要が終わったとしても、次に待ち構えているのが、相続税の申告です。
相続税の申告で必要な書類は、以下の6種類に大別されます。
①身分関係
②不動産関係
③預貯金・証券口座関係
④生命保険関係
⑤債務・葬式費用
⑥その他の書類
では、順番に説明していきます。
①身分関係…「相続人の確定」のために絶対必要
何よりも重要なものは身分関係の書類です。これらは相続人を確定するために絶対に必要で、相続税申告が必要なくても、遺産分割を行うために必ず入手しなければいけないものです。まず先に取得すべきものは、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本と附票、住民票の除票です。
相続人全員の戸籍謄本と附票、住民票が揃ったら、法務局で「法定相続情報一覧図」を作成してもらえばいいでしょう。「法定相続情報一覧図」があれば相続税申告以外の手続きで被相続人の戸籍謄本を提出する必要がなくなります。
それから、相続人全員の印鑑証明書が必要です。「遺産分割協議書」には相続人全員の実印を押しますが、それに添付するためです。
②不動産関係…登記簿謄本と公図、固定資産税評価証明書など
不動産関係で必要になるのは、登記簿謄本と公図、もしあれば地積測量図です。これらは法務局で取得しますが、相続登記を依頼する司法書士に依頼すれば取得してもらえます。
それから、固定資産税評価証明書と名寄帳です。固定資産税評価証明書の記載内容は、自宅に送られてきている固定資産税納税通知書兼課税明細書と同じですから、もし先に概算で相続税を計算する場合は、固定資産税納税通知書兼課税明細書を税理士に渡して計算してもらってください。
賃貸用のアパートを所持していれば、居住者との賃貸借契約書が必要です。賃貸している場合、借家権と借地権に相当する評価額を相続財産から減額することができます。
③預貯金・証券口座関係…残高証明は「相続開始日」で依頼
預貯金・証券口座関係で必要なものは、銀行預金(ゆうちょ銀行であれば貯金)の残高証明書です。定期預金があれば、既経過利息の計算もお願いしておきます。発行を依頼するときは、必ず「相続開始日の残高」で証明してもらってください。よく間違える方がいますが、依頼日の残高証明では認めてもらえません。
亡くなる直前に銀行から引き出しておいた現金が手元に残っている場合は、手許現金として申告します。税理士にその金額を伝えたうえで、銀行預金通帳を渡してください。直前に引出した現金や相続開始前7年間の贈与は、相続財産に加算しなければいけませんので、過去7年分の預金通帳を税理士に確認してもらう必要があります。
預金通帳を紛失してしまった場合は手数料がかかりますが、銀行に取引明細書の発行を依頼するしかありません。
証券口座についても証券会社も同様に残高証明書を発行してもらいます。配当金の通知書が届いていれば、未収配当金を相続財産に計上するために必要になります。
④生命保険関係…死亡保険なら、保険証書+支払通知書
死亡保険に関しては、手元にある保険証書と、それに基づいて請求した死亡保険金の支払通知書です。医療保険に加入していた場合は、入院給付金の支払通知書も必要です。
⑤債務・葬式費用…借金があれば残高証明書が必要
金融機関からの借入金があれば、その残高証明書が必要です。未払いの費用については、税金や保険料なら納付書、水道光熱費なら請求書や領収書が必要です。
医療費や介護費用は大きな金額であると思いますが、これも相続開始後に受け取った請求書や領収書が必要になります。
葬儀の費用は、葬式費用、火葬費用とお布施、納骨費用を申告することになるから、これらの請求書や領収書が必要です。お布施は領収書がなくてもかまいません。税理士に金額を伝えるだけで問題ありません。
⑥その他の必要書類…贈与に係るもの、車や骨董を評価する書類等
生前贈与がある場合は、贈与財産を相続財産に加算することがあるので、贈与契約書や贈与税申告書が必要です。もし亡くなった人が会社経営者の場合は、非上場株式の評価に必要な資料が必要ですし、個人事業主や賃貸不動産オーナーであれば、準確定申告に必要な資料もそろえる必要があります。
ほかにも細かい相続財産として、自動車、ゴルフ会員権、リゾート会員権、老人ホームに係るお金、貴金属や絵画・骨董品などを評価するための資料も必要になります。
また、相続税申告の特例や控除に必要となるものとしては、相続人の障害者手帳、相続人が賃貸物件に住んでいた場合には過去3年分の賃貸契約書、過去10年以内の相続税申告書、家族名義になっている財産に係る資料などもあります。
岸田 康雄
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
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