(※写真はイメージです/PIXTA)

相続手続きを行うなか、意外な形で故人の思いに触れることがあります。心温まるものも数多いなか、ときにはそうでないケースも…。ある家庭の相続から、実情を探ります。

ひそかに残した遺言書の驚きの内容

鈴木さんと弟が40代になって子育てが落ち着いてくると、今度は年齢を重ねた父親が体調を崩すようになりました。その後、検診でがんが発覚したのです。

 

もちろん家族は心配しましたが、父親は病院での治療を続けながらも、意外と元気な様子で、これまでとあまり変わらず過ごしていました。

 

「母親に電話すると〈お父さん? ちゃんと病院に行っているし、大丈夫〉〈今日も出かけていて、飲み過ぎないように注意したところだわ〉などと、様子を教えてくれました」

 

ところが去年の秋口から一転、状態が悪化。その後は入院したものの、年明けすぐ、あっけなく亡くなってしまったのです。

 

70代半ばでの旅立ちは、平均からみればやや早いかもしれません。とはいえ、病気のこともあり、それなりの心づもりはできていました。家族としても大きな混乱はなく、葬儀後は、粛々とその後の手続きが進められようとしていました。

 

ところが葬儀から間もなく、鈴木さんの母親のもとに弁護士から連絡が入りました。父親が公正証書遺言を残しているというのです。

 

「青天のへきれきでした」

「母がいうには、まったくそんなそぶりもなかったそうで…」

 

しかし、びっくりするのはそのあとでした。

 

「父の遺言書には〈母親には一切を相続させない〉〈家は売却のうえ、財産は子ども2人で分割するように〉と書かれていました」

 

付言事項には、鈴木さんの母親に対して「妻らしいことをしてくれなかった」といった趣旨の、恨み言ともとれる内容が書いてありました。

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