若者を犠牲にして保険会社を守った日本
バブル期に予定利率5%の保険契約を販売してしまったところまでは仕方ない面もあるでしょう。誰もそのあとあっという間にゼロ金利まで金利が低下してしまうとは想像もできなかったと思います(当時は10年国債の金利が4%を割ったことはありませんでした)。
しかし、現実に金利が下落してしまい、回復の見込みがなくなった時点で、予想される損失を誰が負担すべきなのかについては、もっとしっかりと考えるべきであったと思います。現実としては、あまり議論されることもなく、なしくずし的に若い世代が負担することになってしまいました。
これは過去の問題ではなく現在進行形の問題でもあります。いまからでも遅くないので、しっかり議論されるべきだと思います。その上で、若い世代が「バブル期のお宝保険の損失を我々の世代が負担してあげようではないか!」という結論に達するのであれば、現状維持でよいとは思いますが。
海外からの反応
金融庁に勤めていたとき、イギリスの保険監督官にこの件について質問したことがあります。その人からは「何を聞かれているのか正確に理解できていないかもしれないが、ふつうはそんな状態になる前に保険会社を潰すだろうから、そんなことは起こらないのではないか」という困惑した回答が返ってきました。
また、これは私が直接聞いた話ではないのですが、私の上司がドイツの保険監督官から「日本はなぜ急激な金利低下でも生命保険会社が耐えられたのか?」と問われ、上記のような説明をしたところ、先方はあきれたような顔をしていたそうです。要は、国民を守るのが保険監督の目的なのに、若者を犠牲にして保険会社を守った日本の保険監督が理解できなかったということでしょう。
諸外国では、保険会社が国民に損害を与えそうな状況になるとまだ資金に余裕のあるうちに保険会社を潰すのが常識的な対応ですが、日本では保険会社が債務超過になってクビが回らなくなるまで営業させ、損失が膨らみきったところでしぶしぶ保険会社を潰すという対応をとってきました。
諸外国と異なり、日本では「債務超過になるまで保険会社を潰してはいけない」という誤った思い込みがあり、債務超過にならないように保険会社に利益を貯め込ませるように指導していることが、日本の保険の保険料が高いことの一因になっています。