(※写真はイメージです/PIXTA)

投資をするにあたって知っておきたい株価のパフォーマンスと企業収益の関係性について、「大きく負けない運用」を実践する本庄正人氏(キャピタル アセットマネジメント株式会社)が詳しく解説します。

【二つの世界観】

以上、企業業績をどう使うのかによって投資家のタイプが割安株(バリュー)投資家と成長株(グロース)投資家に分かれるということを申し上げましたが、現実には両者を折衷した投資スタイルもあるものです。

 

下添の図1と2は典型的なディープバリュー投資家と成長株投資家の売買タイミングを示したものです。

 

株価が、例えば群集心理によって売り続けられ下落し本源的価値を下回ったとします。本源的価値は短期的な株価の変動には、余り左右されないので株価の下落はバリュー投資家に買いのチャンスを与えます。経営改善等が奏功して株価が上昇、本源的価値を上回ってきたところが、バリュー投資家のエグジット・ポイント(出口点)となります。[図表1]

 

[図表1]バリュー投資家の世界観

 

一方、成長株(グロース)投資家は、今後急速に成長すると考える銘柄に投資していきます。株価も回復し、既に上昇している場合が多いものです。かつては割安銘柄とみなされていたものが、成長ポテンシャルありとして評価され得ます。バリュー投資家にとって、本源的価値は安定したものと思われていますが、成長株投資家には本源的価値そのものが株価よりも早く上昇したものと認識します。

 

どちらが正しいのか? -結論としてはどちらも正しいのでしょう。

 

[図表2]は成長株投資家の世界観を示したものです。今後急速に成長すると予想される会社は、過去において、既に成長の実績を示した会社が多いものです。バリュー投資家が価値の上昇した株式を売るかもしれないのに対して、成長株投資家は、そのような株式を買うかもしれない。本源的価値に対する見方は全く異なっています。

 

[図表2]成長投資家の世界観

 

過去の例を見てみますと、高クォリティ株は低クォリティ株をアウトパフォームしてきました。バリュー投資とクォリティ投資の双方が機能するため、これらの概念を組み合わせればさらに優れたものにできると考えたのが、「適正価格の成長株」(Growth at a reasonable price, GARP)と総称される投資戦略です。

 

また、運用者の調査能力や企業のどういった部分に着目するのかといった問題とは別に、市場ポートフォリオ(米国におけるS&P500株価指数)をPBRの水準で二つのグループに分け、各々時価総額ウェイトでポートフォリオを組んで指数化したデータがあります。もう一つ、異なった動きをする銘柄群があり、小型株で、ラッセル2,000小型株指数で代表するのが通例です。

 

リーマンショック(Great Financial Crisis)から底打ちした株式市場全体の傾向としてはバリューよりもグロース優位の展開となっていたことがわかります。また、株価の上昇が特定の大型成長株式に集中してきたことも事実で、小型株指数は、当該期間ではS&P500に劣後しています。[図表3]

 

出所:Bloombergデータをキャピタル アセットマネジメントが加工
[図表3]スタイル別株式指数の推移(2008年12月31日~2024年9月30日) 出所:Bloombergデータをキャピタル アセットマネジメントが加工

 

 

※本稿のデータは過去の実績や結果であり、将来の動向やファンドの運用実績を示唆あるいは保障するものではありません。

 

本庄 正人

キャピタル アセットマネジメント株式会社 運用本部 副本部長

日本証券アナリスト協会検定会員

 

東京大学法学部卒業。みずほ(旧安田)信託銀行にて外国資産運用部長として運用業務を統括。企業の分析、ポートフォリオの計量的リスク管理能力を強化するため、外資との提携戦略を行う。ニューヨーク、ロンドンのアナリストグループの企業リサーチ活動を指揮する。スイスPBであるロンバード・オディエ・ダリエ・ヘンチ社の東京CIOを経て、カレラアセット・マネジメントで代表取締役社長。キャピタル アセットマネジメント株式会社ではオーケストラ ファンド(オルタナファンドや米国株ファンド等に投資するFoFs)を担当。

 

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