2,500万円を失う悪夢
帰国後、早速、浩一さんは後藤さんに勧められた私募債という商品に投資を始めたのです。最初は100万円でスタート。3ヵ月後に振り込まれた利払いに気をよくした浩一さんは、投資額を500万円に増やしました。半年後には1,000万円、そして1年後には2,500万円にまで膨らんでいったのです。
久美子さんは、当初は反対したものの「老後をさらに豊かにするチャンスだぞ!」という浩一さんの熱意に圧倒され、最終的には了承しました。退職金と合わせて4,000万円あった預貯金は、クルーズ旅行で3,500万円に目減りしていたので、そのうちの2,500万円を投資に回すことになったのです。
しかし、1年半後、投資先の会社から利払いがストップ。焦って後藤さんに連絡をとってみたものの「債務不履行になっちゃったみたいだね。卵は1つのカゴに盛るなっていうもんな。まさか、集中投資していないよね」と言われ、プライドもあり2,500万円を失ったとはとても言えませんでした。
「まさか自分たちが……」と、浩一さんは呆然。金融関連の会社で働いていた久美子さんは、「恥ずかしい、恥ずかしい」とことさら大きなショックを受けて涙し、寝込んでしまいました。
うまい話には裏がある
山田さん夫妻のケースは、決して珍しいことではありません。金融庁の最新データ(令和5年7月〜9月)によると、寄せられた相談のなかで、投資商品等に関するものは相談全体13,271件に対して約4分の1の3,092件、前期比165件の増加になっています※1。
今回、山田さんが投資した私募債は、社債の一種です。社債とは、企業が資金を調達するときに発行する債券のことで、不特定多数に販売する公募債と、少数特定の投資家に債券を発行する私募債にわかれます。私募債は公募債と比べて規制が緩く、投資家保護の観点から注意が必要です。
また、退職金という大切な資金を運用する際は、慎重さがなにより大切です。高利回りを謳う投資話には特に注意が必要で、『うまい話には裏がある』という格言を胸に刻んでおくべきでした。
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