投資の成果を得るには「株式市場に留まり続ける」ことが重要
投資の成果は、投資期間を通じて平均的に現れるものではありません。我が国から世界23ヵ国の株式市場に分散投資を行った場合、1971年から2007年3月までの間の月間上昇率の上位5ヵ月に投資を継続していなければ、運用成果は投資を続けていた場合の6割程度にしかならなかったという試算があります。
また、我が国の株式投資のタイミングについては、1970年から2007年まで投資を行った場合、仮に1972年、1986年、1999年の3年間投資を行っていなければ、定期預金で運用した場合よりも収益性が劣るという試算結果もあります。
つまり、こうしたよい時期を逃すと、株式投資からよい収益を得る機会はあまりないということも事実なのです。それらを避けるために、株式投資の実際的なスタンスとしては、投資家として株式市場に留まり続けることがポイントとなります。元米国証券アナリスト協会会長のチャールズ・エリスは「投資家は稲妻が輝くときに市場に居合わせなければならない」と述べているのですが、さまざまなデータがこれを裏付けています。
株価は短期的には不規則に変動するとされますが、中長期的には景気の変動を先取りしながら変動します。
米国の株価は35年程度の周期で循環しており、発達した資本主義経済には一世代を周期とする景気のサイクルが存在するとし、2007年3月の時点で、当時まだ景気のよかった米国も1970年代以来の低迷期になると予想し、その後は長期の上昇過程に入るという意見がありました(小野善康「不況のメカニズム」大阪大学、2007年)。
実際、2008年9月のリーマン・ショックから米国の株価は低迷し、2013年になりようやくリーマン・ショックの下落分を取り戻して上昇過程に入りました。しかし、35年間はシニアの方々にとってはあまりに長いといえます。
債券投資を国際分散投資の対象に
こうした期間を短くするには、世界のさまざまな国に投資をする「地域分散」という手法がいわれてきました。経済情勢の異なるさまざまな国に投資すれば、各国の景気変動は一致していないので、株価の変動を小さく、短くできるとされていました。
しかし、今世紀に入り、各国の経済の結びつきが強まり、株式市場は統合される傾向があり、分散投資の効果が小さくなっています。我が国の株式の約3割は海外のグローバルな投資家が保有していますが、そうした投資家は海外の情報を活用しながら日本株に投資をするとされています(岩壺健太郎「東証株価の情報効率性に果たす海外投資家の役割」神戸大学、2021年)。
そこで、さらに債券投資を国際分散投資の対象に加えます。なぜなら、金利の変動で価格が変動する債券は不景気になると金利が低下し、過去に発行された債券は相対的にリターンの高い債券となるので債券価格が上昇します。これは景気悪化で株価が下落して投資成果が悪くなる株式投資と反対の動きとなるため、分散投資をすると資産運用全体の価格変動を緩やかにします。
こうして内外の株式に加えて内外債券に分散投資を行えば、シニアの方も株式投資による資産運用が可能となるでしょう。
実際、2020年までの過去41年間で試算すると、投資期間が10年の場合の元本割れの確率は、日本株だけであれば42%ですが、外国株だけであれば9%となるとする報告があります。これはやはり、世界各国の株式への分散投資で我が国の景気変動の影響を小さくする効果は大きいことを教えてくれる数値ですが、この報告はさらに内外の債券まで含めた4資産の分散投資であれば、10年間の投資ではゼロとなるとしています(臼杵政治「『長期投資』って何年間?-資産・投資期間ごとの元本毀損確率」ニッセイ基礎研究所、2021年)。
以上のようなわけでシニアの方にはこうした債券も加えた国際分散投資をお勧めしたいところです。
藤波 大三郎
中央大学商学部 兼任講師
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