日本では、俳優やアイドル、歌手などの有名人が宣伝を行う「タレント広告」が主流になっています。このタレント広告が国内で広く使用されている理由と、効果を発揮する商品について、法政大学文学部心理学科教授の越智啓太氏による著書『買い物の科学:消費者行動と広告をめぐる心理学』(実務教育出版)から一部を抜粋・再編集して解説します。

なぜワーストタレントがテレビコマーシャルに出るのか

ところが、実際のコマーシャルを観ていると必ずしも好感度が高いタレントばかりが起用されているわけではないことに気がつくと思います。

 

ときには好感度ランキングワーストタレントでさえ登場しています。なぜこのようなことが発生するのでしょうか。

 

ひとつは、ファン効果(※)があるため、人気タレントが必ずしもコストパフォーマンスが良いとは限らないからです。

※人気タレントはたくさんの商品やサービスの広告に起用されています。ひとりのタレントが多くのものと結びついているがゆえに、連想関係が少なくなっていくことを「ファン効果」といいます(このファンは「タレントのファン」のファンとは違い、ひとつの概念とつながっているノード(結び目)の数のことをさします)。

 

人気ワーストタレントはワーストであるがゆえに有名でもありますし、また、マスメディア登場回数も多いと思われます(登場回数が少なければ、そもそもワーストワンにはならないでしょう)。

 

上記の仮説の中では、注目仮説や想起手がかり仮説の効果を条件づけ仮説やバランス理論の効果よりも優先しているわけです。

 

これらの仮説の下では、我々は感情の方向性(好き-嫌い)よりはその強度に敏感なので、コストパフォーマンスが良い可能性があるのです。

 

宣伝広告費をかけられる大企業は基本的に失敗がないみんなに人気系のタレントを起用しがちなのですが、中小企業がコストをかけずに効果を最大化しようとすると、独特のポジショニングのタレントを起用しがちになるわけです。

 

 

越智 啓太

法政大学文学部心理学科教授

 

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※本記事は『買い物の科学:消費者行動と広告をめぐる心理学』(実務教育出版)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

買い物の科学:消費者行動と広告をめぐる心理学

買い物の科学:消費者行動と広告をめぐる心理学

越智 啓太

実務教育出版

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