シニアの資産形成、リスク低減するつもりが…生半可な知識で臨む「国際分散投資」がはらむ危険性【証券アナリスト資格を持つFPが助言】

シニアの資産形成、リスク低減するつもりが…生半可な知識で臨む「国際分散投資」がはらむ危険性【証券アナリスト資格を持つFPが助言】
(画像はイメージです/PIXTA)

資産形成を目指すシニアの方のなかには、国際分散投資を実施すべく、個別株や債券への投資にチャレンジする方も少なくないようです。しかし、海外の株式や債券は情報取得の面でかなりハードルが高く、一般の方にとって簡単ではありません。元銀行員で大学教授のキャリアを持ち、いまも教壇に立つFPが、シニアのための堅実な資産運用について解説します。

個別の海外株式への投資、シニアにはお勧めできないワケ

シニアの方が国際分散投資を行ううえで注意すべき点として「海外の事情はわかりにくい」ということがあげられます。その点から、個別の株式や債券の投資を海外で行うことはお勧めできません。

 

たとえば、リーマン・ショックの要因となった米国における不動産バブルやサブプライムローン問題について、日本ではその重大性が広く認識されることはなかったわけです。海外への投資には、こうした情報面での問題が国内の場合より格段に大きいといえます。

 

そうした問題を解決するのが「投資信託」という金融商品です。この商品は分散投資を手軽に行える仕組みとなっています。その分散投資の手法も、現在では理論的な分析が進み、多くの株式や債券に分散投資を行う「インデックス運用」の手法が取り入れられています。

 

インデックス運用とは、投資対象の株式の銘柄選びを行わず、「日経平均株価」や「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI)」のような、市場の指標(インデックス)と同様の値動きとなるように投資をする手法です。

 

この投資信託の分散投資によるリスク低減効果に加え、「インデックス運用」という手法を用いれば、情報面の問題はある程度対処できます。

 

インデックス運用は、株式市場全体に投資をしたのと同様な価格変動をするように機械的に分散投資を行うものであり、個々の企業の株価の価値についての分析を、市場の価格の分析力に任せる手法です。その理論的な背景である「効率的市場仮説」は、ノーベル経済学賞を受賞したユージン・ファーマ氏により1965年に報告されています。

 

この効率的市場仮説とは「金融市場がすべての利用可能な情報を反映する」という説です。この説に従うと、株式市場が持つ株価についてのあらゆる情報を処理し、株価に集約する機能を活用するのがインデックス運用の投資信託であり、投資家の個々の株価の分析力は不要となります。

 

その意味で、海外の事情に詳しい方を除き、一般のシニアの方は国際分散投資では、こうしたインデックス運用の投資信託を活用するほうが堅実でしょう。

世界の債券・株式でインデックス運用を行う投資信託がお勧め

海外の長期金利が日本より高いという状況を受け、海外の個別の債券投資が有利とされることがあります。しかし、こうした個別の債券投資は、先述の通り、情報の点で大きなリスクがありますので、シニアの方は避けたほうがよいでしょう。

 

海外の個別株式を購入する方は少ないのですが、近年は格付けの知識が普及しているために、海外の高格付けの個別債券に投資するシニアの方は結構いらっしゃるようです。

 

しかし、高金利となった国の通貨は、将来的には通貨価値が下落し、円高となる可能性が高いとされています。そして実際、1990年から2010年までの期間、日米の金利格差は10年物国債利回りで見ると、米国が日本よりも2.84%高かったのですが、同じ期間にドル円相場は年率平均で2.80%ドルが下落していますので、金利差は為替損で帳消しになっていたという報告があります(竹中正治「賢い資産運用の秘訣」2011年、龍谷大学)。

 

公的年金の運用における海外への投資は、国内資産への投資だけでは得られない幅広い分散によって、世界経済全体の成長を投資収益に取り込み、分散投資の効率性を改善することが期待できるからです(年金積立金管理運用独立行政法人「分散投資の意義①1位になる資産は当てられない」)。

 

もっとも為替レートは、長期的には内外のインフレ率の差によって決まるとする「購買力平価説」という考え方が有力ですので、どうなるかわからない部分はあります。これによると、消費者物価をベースにした購買力平価は1ドル=109円程度(2024年9月18日時点:公益財団法人国際通貨研究所)ですので、将来の円高の可能性は大きいといえます。

 

やはり通貨分散も考えて、世界の債券、そして世界の株式にインデックス運用を行う投資信託を活用した国際分散投資が、シニアの方には適切でしょう。

 

 

藤波 大三郎
中央大学商学部 兼任講師

 

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