お客様の誤りを訂正しなければならないときは、わたしたちの誤りも可能性に含める
【無難なフレーズ】
価格改定はしていませんが、何か別の商品を見られたのですかね。(本当に)こちらの商品でしたか?
【心が動くフレーズ】
価格改定はしていないのですが、もしかしたらこちらで価格を出し間違えてしまっていた可能性もあります。申し訳ございません
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どんなことにも〝絶対〟はないですし、もしかしたらこちらに非があったのかもしれないと、常にその可能性を持っておくことが大事です。その意識があれば、初めからお客様に非があるような伝え方にはならないはずです。
忘れられない接客クレームからの学び
お恥ずかしい話ですが、私には10年経った今でも鮮明に覚えている「接客クレーム」を起こした経験があります。サービスエキスパート(SE。一定以上の販売実績・顧客数を持つ人に与えられるポジション)に認定されて間もない頃、私は「SEとして、プロの販売員として、手本になるような接客をしなくちゃ」と意気込んでいました。
そんなある日、会社の同僚と思われる男女2人組のお客様を接客する機会がありました。男性のお客様は、ご自身が知っているルイ・ヴィトンの歴史や知識をたくさん話されています。そして、「なんかさ、すっごい値上げしてるよね? 半年前に来たときは1万6千円だったからね」とおっしゃられたのです。
私は〝ここ1年以上値上げはしていないし、1万6千円で販売していたのは何年も前だな……〞と思いました。そして、すぐに価格改定歴を調べて、「ここ1年価格改定はしていませんが、何か別の商品を見られたのですかね。(本当に)こちらの商品でしたか?」とお伝えし、初めからお客様に非があると決めてかかってしまったのです。
何をそんなに必死で戦おうとしたのか、その頃の私はSEになったことで力みすぎて片意地を張ってしまったのだと思います。
お客様は大変ご立腹され、そこから3時間以上店頭でお話しされました。「謝罪しろ」「何が悪かったのか言ってみろ」と何度もおっしゃられ、「プロの販売員として本当に失礼な発言でした」と伝えたところ、「プロの販売員? プロ?」と大声で笑われました。
おっしゃる通り、そのときの私は、ただただ自分本位な接客で「プロ」どころか「販売員」としても失格でした。「もしかしたら私が間違っていたのかも」「もしかしたら自分の記憶違いかも」「もしかしたら私の伝え方がよくなかったのかも」とその可能性を常に持っておくことが大事だったと今は思います。どんなことにも、〝絶対〞なんてないのですから。
あのとき、「この1年価格改定はしていないのですが、もしかしたらこちらで価格を出し間違えてしまっていた可能性もあります。申し訳ございません」と〝1年間価格改定をしていない〞という事実はお伝えしつつ、〝でもこちらに何らかの不備があり、お客様に正しい情報が伝えられなかったのかもしれない、そうだとしたら本当に申し訳ない〞ということをお伝えすべきだったと思うのです。
大事なのは正論を述べることよりも、ご来店されたお客様がどんな目的でいらっしゃったのかを汲みとることです。お客様は「知識を張り合いたくて来店した」わけではないでしょう。本来の「商品に興味があって来店した」というお気持ちを損なわないよう、楽しんでいただくことが大事なのです。
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