家を手放す決意
夫婦2人の生活費を賄うだけならなんの問題もなかったはずの老後資金は、双子の存在によって、あっという間に減っていきました。
宝田さんが最も恐れていたのは、今後さらに生活費が増大し、退職金や貯金が底をつくこと。息子たちを抱えながらこのまま過ごしていたのでは、早いうちに老後資金を使い果たしてしまうのではないかと、不安がいつもつきまといます。働くように伝えても一向に働く気がないままなのです。
「このままでは自分たちの老後が危うい……。それに、このまま働かずに息子たちが老後を迎えたらあの子たちはどうなるのか……」このように考えた宝田さんは、とうとう心に決めます。なにも告げず、双子を残して夫婦で夜逃げ同然に家を出ることにしたのでした。
息子たちに掛かるお金よりも、夫婦2人で地方のアパートで家賃を払って暮らしたほうが支出が少なくすみ、自分たちの身の安全を守ることと同時に、あえて突き放すことで自立した生活を送ってもらいたいという想いからでした。
何度話をしても働く気配が一向にないため、自宅の名義変更などについても弁護士に依頼し、一切の連絡を遮断。こうして、なんとか自分たちの生活を守ることは達成した宝田さんでしたが、息子たちの今後を不安に想いながら生活していくことになったのでした。
引きこもりの存在は少なくない
労働力調査(基本集計)2022年(令和4年)平均結果によると、15歳~64歳のうち働く意思のない人の割合は2%にもなるといわれており、引きこもりの子供の悩みを抱える高齢者も多いものです。
今回の宝田さんのように、働かない引きこもりの子供を抱え、子供たちの将来はもちろん、自分たちの老後の資金の悩みを抱える家庭も少なくはありません。そして、いつまでも改善しない状況で、親も子も共倒れになってしまうのを回避するために、宝田さんのように、あえて突き放すという判断も時には必要かもしれません。
今回、宝田さんはもう20年近くものあいだ息子たちと向き合い、自立のために手を尽くしてきて、非常に追い詰められた状況だったため、仕方がないともいえます。しかし、守ってくれる親が去ったいま、双子が他人に迷惑をかけないかという不安もあります。こうなる前に最低限の生活費を入れさせたり、少額でも働いてお金を稼がせ、負荷が少ない仕事から徐々に自立を支援したりするという方法を検討すべきだったでしょう。
また、現在は在宅でできる仕事も多く、働きに出るということだけが選択肢ではありません。スキルを仕事に変えることで在宅で仕事をすることができますので、そういった選択肢を与えつつ、自立した生活ができるように情報を集めてやらせてみる、引きこもりの社会適応を支援する団体もありますので活用してみるといった方法もあります。
そういった判断をするためにも、毎月の収支を見える化し、このままだと将来家計がどうなるのかを試算してみることで、どう折り合いをつけていけばいいかを考えることもできるでしょう。
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