【“プロ”に聞く!ベトナム経済】
●歳入の上振れが景気回復を裏付ける
主要経済指標は堅調
●8月のベトナムの主要経済指標は、単月では振れが比較的大きいため年初来累積の前年同期比でみると、鉱工業生産、小売売上高、輸出ともに足元で堅調を維持しています。また、比較的相関の高い実質GDP成長率と鉱工業生産の前年同期比は1-6月期にそれぞれ+6.4%、+7.2%となっており、1-8月期の鉱工業生産が同+8.6%へ加速したことから類推すると、1-9月期の実質GDP成長率は1-6月期から伸びていると考えて良さそうです。
歳入は上振れ、歳出に遅れ
●政府の財政収支をみると、24年1-8月の歳入は前年同期比+17.7%となり、年間予算消化率は前年同期の70.0%を上回る78.5%に達しました。季節性を考慮しなければ、8ヵ月分の歳入は年間の66.7%に相当するので、2024年の歳入は好調であるといえます。歳入が好調であることは、景気回復を背景に税収が増加していることを示唆しています。一方、1-8月の歳出は同+1.9%と小幅の伸びとなっており、年間予算消化率は前年同期と同じ52.1%にとどまっています。9月以降に政府が歳出執行ペースを加速させる余地があり、この場合、景気には更にポジティブに作用します。
観光業は持ち直し
●海外からベトナムへの訪問者数は8月に概ね143万人となり、7月の115万人から増加しました。ベトナムでは多くの地域で10~11月から3~4月にかけて乾季となり、観光により適した時期を迎えます。乾季にはクリスマス、旧正月など大型休暇シーズンがあることを考慮すれば、観光業は今後も持ち直しを続け、サービス業にポジティブに作用すると思われます。
ドンには上昇余地
●米国の利下げ観測の高まりを契機に6月下旬以降、米ドル指数(DXY)は下落傾向にあります。今後米国の利下げが続くと想定すれば、米ドルは更に下落する可能性があり、ベトナムドンの対米ドルレートには上昇余地があるとみられます。
●ドンの上昇は輸入物価を通じて国内のインフレを抑制する効果があります。弊社は、2025年末までベトナム国家銀行(中央銀行)が政策金利を据え置くと予想していますが、国家銀行がインフレを抑制可能と判断すれば、何らかのショックを通じた景気下振れの場合に利下げなどの金融緩和措置を行う可能性があります。
(2024年9月17日)
石井 康之
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフリサーチストラテジスト
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