現在の職場よりもよいオファーがあり転職を決めたとします。しかし、いざ退職届を出してみると、上司や人事部門から引き留められることも。相談程度ならば特に気にする必要はありませんが、脅迫まがいの引き留めをされた場合どう対応すればよいのでしょうか。今回は、東京エグゼクティブ・サーチ(TESCO)の代表取締役社長・福留拓人氏が、Aさんの事例とともに「高圧的な引き留め」への対処法を事例と共に解説します。
辞めるなら「損害賠償」を請求するぞ…上司から脅迫まがいの慰留。退職を無理やり引き留められたときの対処法とは?【転職のプロが助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

Aさんは日本の労働三法で保護される立場にある

では、正解を申し上げましょう。Aさんはまったく責任を負うことはありません。なぜなら日本国憲法では、職業選択の自由が認められているからです。その原則は商法や会社法に優先します。

 

さらに民法の使用者責任の項目に照らして考えると、「Aさんがいたから契約した」というのは契約に立ち会っていないAさんにとってまったく関係ないことです。これはあくまで会社がセールストークとして書いたことで、Aさんがその契約全体の責任を負わなくてはならないなどということはありません。

 

もしもAさんが当該企業の社長であるとか、委任契約に基づく経営の全体責任を負うといった立場であれば、この話の細部をもう少し見なくてはなりません。現在の職位はチームリーダーと課長の間に該当するということで、組合に加盟しているレベルとも見られます。労働三法によって保護される立場であり、このような巨大な経営リスクを負うような該当者ではありません。

 

むしろ、この会社はAさんが何らかの理由でダメになったらすべてのプロジェクトが破綻するというようなことを表明したことになり、リスク管理がおかしくなっているといえます。Aさんを欠いたとしても誰かが代わりとなり、プロジェクトを滞りなく進められるようにしておくことは会社として当然です。ですから、Aさんは自分の自由意思で現職企業との労働協約を解除し、他社に転職することができます。