(※写真はイメージです/PIXTA)

“病めるときも健やかなるときも、死が2人を分かつまで……”生涯添い遂げる「誓い」をしてスタートしたはずの結婚生活ですが、現実は誓いどおりにいかないケースも少なくありません。昨今熟年離婚が増えている背景には、なにがあるのでしょうか。石川亜希子AFPが、その理由と別れたあとの資産形成方法について、事例をもとに解説します。

日本で「熟年離婚」が増えている理由

いま、同居期間20年以上の夫婦の「熟年離婚」が増えています。熟年離婚という言葉は、2005年に同名のテレビドラマで使われて以来広まり、定着してきました。

 

厚生労働省が2022年に発表した「人口動態統計」によると、離婚件数自体は約17万9,000件と減少傾向にある一方で、同居期間20年以上の離婚は約3万9,000組と高止まり状態です。全体件数に占める「同居20年以上」の割合は、1975年には5.8%だったものが2000年には16.5%になり、2022年は23.5%と過去最高に。時代の変化が感じられます。

 

こうした背景には、平均寿命が延びたことによる「老後の長さ」があります。1975年の平均寿命は男性が71.73歳、女性が77.01歳でしたが、約50年後の2022年には男性が81.05歳、女性が87.09歳と、男女ともに約10年延びています。

 

子どもが独立して家からいなくなり、夫が定年退職して家にいるようになると、1日中2人きりの生活になります。こうした「老後の夫婦生活」が長くなるにつれ、それまで積もり積もった不満や性格の不一致に耐えられなくなり、新しい人生を選択したいと思うケースが増えているのでしょう。

 

また、熟年離婚は圧倒的に女性からの申し出が多いといわれています。これは、女性の社会進出が進んでいることや、年金分割制度の開始も後押ししていると考えられます。

 

由美子さんはネットで熟年離婚について検索するうちに、由美子さんと同じような立場にある人の多さに驚き、勇気づけられました。そして、「専業主婦でも財産の半分は分与され、年金も分割してもらえる」ことを知った由美子さんは、離婚後の生活についてFPに相談してみることにしました。

決断前に押さえておきたい「離婚後の資金繰り」

女性が熟年離婚をする際の一番の問題は、多くのケースで経済的に不安定な状態に陥ってしまうことです。したがって、あらかじめ離婚後の住まいや収支についてシミュレーションしておく必要があります。

 

由美子さんの場合、「離婚後は、母が住む実家に戻ろうと考えています」とのこと。年齢を重ねるほど賃貸物件を借りることも難しくなるため、家賃がかからないことは大きな安心材料です。

 

由美子さんがネットで知った「財産分与」とは、結婚期間中に2人で協力して増やした資産を公平に分配することです。

 

たとえ専業主婦であっても、夫が働きやすい環境を整え、家庭を守ってきたのですから、その半分を受け取る権利があります。由美子さんに聞くと、「財産分与についてはきちんと夫と話し合いたいと考えていますが、家計を任されていたこともあり、コツコツ貯めてきたお金が1,000万円ほどあります」と言い、こちらはすぐに持ち出せそうです。

 

また、結婚期間中に支払った年金を夫婦で分割することを「年金分割」といいます。分割されるのは「厚生年金」のため、配偶者が自営業者など国民年金のみに加入しているような場合は対象外です。由美子さんの場合、元校長である茂さんは厚生年金額も多く、また結婚期間も長いため、試算の結果年金分割で月7万円ほどもらえる見込みであるとわかりました。

 

年金が受給できるようになれば、由美子さん自身の国民年金と合わせて約14万円の収入になります。「これにパートを見つけてもう少し上乗せできれば、問題なくやっていける!」……由美子さんは思わず心のなかでガッツポーズしました。

 

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〈出典〉
■e-Stat「人口動態調査 人口動態統計」(https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003411864)
■厚生労働省「平均寿命の推移」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/tdfk00/7.html)
■厚生労働省「令和4年簡易生命表 1.主な年齢の平均余命」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life22/dl/life22-02.pdf)

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