(※写真はイメージです/PIXTA)

近年では、空き家となった故郷の実家や、遠方の山林・農地など、活用できないのに管理の手間や固定資産税がかかる、いわゆる〈負動産〉を相続して頭を抱える人が増えています。そのため国は不要な土地を手放せる「相続土地国庫帰属制度」を創設しましたが、制度の使い勝手はいいとはいえないようです。司法書士法人永田町事務所の加陽麻里布氏が解説します。

「相続土地国庫帰属制度」以外の処分方法

では、相続土地国庫帰属制度のほかに土地を処分できる方法はないのでしょうか? 現状、実現の可能性はさまざまですが、下記の3つの方法があるとされています。

 

●自治体への寄付 

まず、自治体に寄付する方法です。選択肢のひとつとしてよく語られますが、ここで問題としている土地の場合は非常にむずかしく、ほぼ99%不可能かもしれません。なぜなら、自治体が価値のない不動産を受け入れれば、管理コストの発生するだけでなく、固定資産税も減収となってしまうからです。つまり、いくら「寄付します」といったところで、治体側が使えるものではなければ受け付けません。

 

●相続放棄 

相続発生時に放棄すれば、土地は必ず手放すことができます。しかし、そのためには全財産を放棄しなければなりません。遺産全体を見たときに、相続したい価値ある財産が多いのであれば、やはり相続放棄は現実的ではない選択肢でしょう。また、相続人全員が相続放棄すれば、土地の管理者がいなくなります。その場合、裁判所で相続財産管理人を選定してもらわなければ「管理義務」が残ってしまう可能性もあるため、注意が必要です。

 

●不動産業者に引き取ってもらう 

不動産業者に引き取ってもらう方法もありますが、価値のない土地を引き取ってもいいという業者を探すのは大変です。逆に、それなりの「引き取り費用」を払わなければならない場合がほとんどでしょう。

 

このように、インターネット上でよく見かけるこの3つの方法は、なかなか難易度が高いといえます。それ以外に、下記の方法もあります。

 

●不動産売買のマッチングサービスの利用 

そのほかの現実な手段として、不動産を売りたい人と買いたい人のマッチングサービスの利用があります。この場合の費用は実質無料です。売却というより「譲渡」であり、マッチングした人に土地を引き取ってもらうかたちで処分するのが一般的です。

 

●アプリやサイトで募集をかけて引き取ってもらう 

近年では、上記の④とはまた別に、アプリなどで「無料で山林を活用したい」という人を探して引き取ってもらう例も増えています。

 

とはいえ、やはり「割り切って有償で処分する」方法が、お金はかかるものの、いちばんすっきりする手段ではないかと思います。

「不要な財産」と「価値ある財産」を比較・検討して決断を

不要な土地への対処ですが、「相続財産全体の価値」と「不要な土地を処分する費用」を算出したうえで、それでもプラスの財産が上回るようであれば、相続して土地を有償で処分していく、という選択が現実的だと思われます。

 

一方で、全体を見て処分コストのほうがかかってしまうなら、思い切って相続放棄するのも選択肢のひとつでしょう。

 

いずれにしても権利・義務に関わってくるところであるため、安易な判断はせず、司法書士等の専門家に相談し、検討することをおすすめします。

 

 

加陽 麻里布
司法書士法人永田町事務所
代表司法書士

 

★相続したいらない土地、同処分する?

相続土地国庫帰属制度 活用の注意点【司法書士が解説】

 

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