(※写真はイメージです/PIXTA)

中古不動産投資を考える際、「購入時点で入居者がいるからすぐに家賃収入が得られる」と、オーナーチェンジ物件を好む人も多いでしょう。しかし、その実情を知っていなければ、あとあとこんなはずではなかった……と後悔するケースも。本記事では、リノベーションバリューデザイン協議会の代表理事、REISM株式会社取締役の挽地裕介氏が、中古不動産投資の物件選びにおける注意点と現状トラブルとなりやすい問題点についてわかりやすく解説します。

法改正によるインスペクション説明の義務化

入居者が賃貸住宅を選ぶ際に重視する点として、「住宅の広さや間取り」が81.7%、「家賃・管理費の負担水準」が81.0%と生活の基本的な水準に次いで、「住宅の状況(いたみ・劣化等)」が70.9%、「住宅の維持管理」が67.3%と、物件の管理状況についても7割近くが高い関心度を持っていることがわかります

 

数年前から大量生産型の画一的なデザインは選ばれなくなり、アクセントクロスや最新設備など一部分のみを新しくして「リノベーション済み」と謳ったり、空室を補填するために家賃を調整したりするなど、表面的な改善を行っている物件や管理会社が多くなっています。しかし、本当に怖いのは目に見えない老朽化やトラブルです。

 

日本は新築至上主義の考えがいまだ強く、今後増え続ける中古不動産取引を活性化させるためには、物件の状況や品質についての透明性を高めなければなりません。そのような取り組みの一環として、2018年の法改正でインスペクション(建物状況調査)の説明が義務化されました。

 

また、2020年4月の民法改正で「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」へと変わったことで、売主負担が増え、より一層不動産会社の説明責任が重くなりました。こうした背景もあり、物件の劣化状況の調査について少しずつ理解が深まっていますが、あくまでも説明や斡旋の義務であって、実施の義務ではありません。

投資対象として間違いないか判断できる「エビデンス」が重要

自分自身が住む家として購入する物件では、このようなインスペクションで建物の劣化状況を調べ、見つかった瑕疵の補修を行うことが増えていますが、賃貸不動産の取引においてはオーナーチェンジのために室内を確認することができません。

 

壁紙の後ろで過去の漏水跡が隠れていたというケースも10件に1件の頻度で起こっており、そのような瑕疵をそのまま放置してしまうと建物の劣化スピードが早まることはもちろん、ほかの部屋へのトラブルに発展した場合は巨額の負担を免れない可能性も出てきます。

 

国土交通省が推し進める、長期優良住宅や住宅性能表示、瑕疵保険、インスペクション、住宅履歴等の住宅の性能の確保や客観的な評価に係る各種制度を整備し、良質な住宅ストックの活用を図るための「住宅ストック維持・向上促進事業」においても約70団体ほどが採択されています。しかし、賃貸不動産の調査や適正な評価における取り組みは少ない実情です。

 

投資用としての資産運用のパフォーマンスを最大限に引き上げるだけでなく、自分自身の資産を守るためにも、まずは購入する不動産においては表面的な賃料や利回りだけでなく、過去の取引事例、管理活動の履歴、修繕およびリノベーション工事の内容、専有部および共有部の瑕疵など、とことん物件を調べ上げることが重要です。

 

参考

※⼀般財団法⼈住宅改良開発公社賃貸住宅市場の動向と将来予測(展望)調査より

https://www.kairyoukousya.or.jp/wp-content/uploads/2021/05/2020_syouraiyosoku.pdf

 

 

挽地裕介

リノベーションバリューデザイン協議会 代表理事

REISM株式会社 取締役

 

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※本連載は、リズム株式会社取締役の挽地裕介氏による書き下ろしです。

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