(※写真はイメージです/PIXTA)

財産を受け取ったときにかかる贈与税は、年間110万円までが基本控除で非課税になるため、相続税対策として生前贈与を検討する人も少なくありません。しかし、なかには贈与として認められず、多額の追徴税を課されてしまうケースがあるといいます。そこで今回、生前贈与の注意点と否認されないためのポイントについて、事例を交えてみていきましょう。多賀谷会計事務所の宮路幸人税理士がくわしく解説します。

「贈与税」と「相続税」の違いとは?

まず、「贈与税」は財産の贈与を受けたときに、「相続税」は遺産相続が発生したときにかかります。どちらも、所有している財産を渡す側ではなく受け取る側に課税されることが共通点です。

 

贈与税と相続税はどちらも、財産が多くなるほど税率が上がる累進課税税率となっており、いずれの税金にも各種控除や非課税制度などがあります。贈与税は年間110万円まで、相続税は相続人が1人の場合、3,000万円+600万円×1人=3,600万円までであれば非課税です。

 

また、同じ金額の財産を受けた場合、相続税よりも贈与税のほうが税金は高くなります。

 

1億円の財産を①相続で受け取った時と②贈与で受け取った時、それぞれの税額を比較してみましょう。

 

①相続税(法定相続人が子1人の場合)

(1億円-基礎控除3,600万円)×30%-700万円=1,220万円

 

②贈与税

(1億円-基礎控除110万円)×55%-640万円=4,799万5,000円

 

このように、同じ金額でも贈与税のほうがはるかに高くなることがわかると思います。また、相続税は相続人が多かった場合などはさらに減るため、贈与税との差がより大きくなります。

「年110万円の非課税枠」を活用した税金対策

“年間110万円までは贈与税が非課税”だということを聞いたことある人は多いでしょう。

 

この「年間110万円の非課税枠」をうまく活用し、子供や孫などに財産を与えておくことで、将来相続が起こったときにかかる税金を減額できます。また、申告等も不要なことから、簡単にできる相続税対策として広く知られているのです。

 

しかし、なかには「年110万円以内」であっても課税対象となるケースがあります。

 

「年110万円以内」の贈与でも課税されるケ-ス

まず勘違いされやすいのが、非課税の110万円というのは贈与“する側”ではなく、“される側”の金額です。たとえば、子どもが1年以内に父親と母親からそれぞれ110万円ずつ贈与を受けた場合、合計220万円となり、子どもは申告が必要となります。

 

また、毎年110万円以内の贈与であればすべて必ず認められる、というわけではありません。相続税の税務調査などがあった場合、生前贈与について事細かに調べられた結果、贈与と認められずに課税されることも少なくないのです。

 

そもそも「贈与」と認められないケース

代表的な例としては、たとえば「祖父母が孫の名義で預金口座を開設し、毎年110万円ずつ入金していた。加えて、通帳も印鑑も祖父母が管理しており、孫は贈与を受けている認識すらない。その結果、祖父母の相続時に発覚……」といったケースが実務上よくあります。

 

贈与とは「当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾することによって、その効力を生ずる」(民法549条)と定義されています。

 

しかしこの場合、孫(=贈与を受けている側)はその事実を知りません。こうなると、贈与契約は成立していないとみなされ、税務調査官の「これ、贈与じゃないですね」という言葉とともに、多額の追徴税を課されてしまうかもしれないのです。

 

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