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「FIRE」が一時期話題となりましたが、経済的自立を達成して早期退職したからといって、必ずしも全員が幸せになれるわけではありません。「一度FIREをしたけど、卒業した」という人も多くいます。FIREが可能だと見積もっていたはずなのに、なぜ再び仕事に戻ることになってしまうのでしょうか? 香港の金融機関で産業調査に従事し、英国でMBAを取得後、株式分析やファンド運用に20年以上携わってきた⾼⾐紗彩氏の著書『ポートフォリオ・マネジメントで一生お金に困らない人になる!』(すばる舎)より、一部抜粋・編集してお届けします。

誤って早計に退職してしまう人が少なくない……

ここ数年、FIREという言葉が流行り、FIREを目指す人が増えてきました。FIREとは、経済的自立(Financial Independent)と早期リタイア(Retire Early)を意味します。そして、パッシブ収入がアクティブ収入を上回った時点で、FIREが可能というわけです。

 

しかし、2023年あたりから、「一度はFIREをしたけど、卒業した」という声も耳にするようになりました。卒業したと言えば聞こえはいいですが、結局、投資がうまくいかず、パッシブ収入だけではやっていけなくなり、また働き始めた、というのが実情のようです。

 

FIREにもFIRE卒業にも、さまざまな形や事情があるでしょう。とはいえ共通しているのは、いつどの時点でFIRE可能なのか、その見極めを誤って早計に退職してしまったケースがかなりあるらしいことです。

 

 一般的に、FIREできる基準は、年収の25倍の資産を持つことだと言われています。

 

年収が300万円であれば7,500万円です。7,500万円に毎年平均して年率4%のリターンを確保できれば、300万円のパッシブ収入となり、アクティブ収入と同額になります。

 

世界の株式市場に分散投資をした場合、過去30年のリターンの平均は年率6〜7%なので、4%というのは実現不可能な数字ではないでしょう。

 

しかし、このような計算をすることなく、あるいはリターンの年率を甘く見積もってしまい、その結果、早々に会社を辞めてしまったことを後悔する人が少なくありません。

 

FIREには、こういった過ちをおかしてしまう、いくつかの「罠」がありますから注意が必要です。

【罠1】ここ数年のパフォーマンスが「通常」だと思っている

ここ数年、株式市場、特に米国の株式市場の上昇率は異常でした。年率10%近いリターンを確保し、2021年には30%に及びました。年率10%で回せたら、資産3,000万円あればリターンは年間300万円。このような状況がずっと続くと安易な仮定をして、退職してしまうケースがあります。

 

しかし、ここ数年が異常なのであって、あなたが老後を迎えるまでこの状況が続くと考えるのは、現実的とは言えません。「ここ数年が異常値」という知識がなかったために、間違いをおかしてしまっているケースです。

 

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