【罠2】“年率4%のリターン”の意味を取り違えている
年間4%で回せたら、と言うときのリターン数値は「年平均」です。年平均とは、何年か投資をしてみて、5年間で20%上昇したなら、5年間の年平均のリターンが20/5=4% という意味です。正確には1/5乗しますが、ここでは計算を簡単にするために5で割ります。
現実の世界では1年目に10%下がるときもあれば、20%上がるときもあります。毎年安定的に4%のリターンが約束されているわけではない、ということです。そのため安易にFIREをすると、原資を取り崩しながら生活することを余儀なくされます。
【罠3】「FIREした」事実が気を大きくさせる
FIREを達成し、経済的自由を得て仕事を辞められたと自覚すればするほど、財布の紐が緩むのが人間というものです。
年収はそれまでと変わらないのに、急にお金持ちになったような気がして気が大きくなり、金遣づかいが荒くなってしまう。気づくと、リターンを大きく上回る支出になり、原資を取り崩すようになり、毎日残高が減っていく人生になってしまった。このままだと原資もいつか枯渇する。そのため、再び働き始めた......。そんなケースも少なくないようです。
いくら資産があれば安心して暮らせるのか?
FIREをするということは、金融市場に自分の全収入の多寡(たか)が依存する、つまり、不確かなものに自分の生活が依存する、そのような人生を選択するということです。寝ても覚めても市場の動きが気になってしまい、「これなら会社勤めのほうが気楽でよかった」「FIREしたほうがストレスフルだ」という人が少なくありません。
FIREを目指した目的──会社勤めのストレスから解放され、毎日気ままにやりたいことをやって過ごす──が果たせるどころか、心の安寧という意味では、むしろ後退しているように感じることと思います。
では、安心して毎日を過ごすためには、いくらあればよいのでしょうか?
それは、人によって異なります。必要金額ギリギリでも安心できるのか、必要金額の倍くらいないと安心できないのか、株式市場の下落幅が何%までなら耐えられるのか、などにもよるからです。
本書では、あなたの価値観と生活スタイルから、あなたが経済的自立を実現するにはいくら必要なのかを算出していきます。ただしこの算出をしても、実際に急落相場を体験すると、ここまでなら大丈夫と頭で考えていた水準よりかなり上の価格なのに、恐怖やストレスを感じるということもよくあります。人間の特性として、損失の痛みは得をした喜びより大きく感じるからです。10億円あっても30億円あっても、まだ安心できないという富裕層も少なくありません。
これは行動経済学のプロスペクト理論で明らかになっていることですが、人間は形あるもので豊かさを感じようとすると、豊かさを感じる水準がどんどん上昇していきます。手に入れて時間がたつと、最初は嬉しかったはずの量・質のものでは、豊かさを感じられなくなっていくのです。そのため、際限なく求め続けることになります。
どんなにお金を持っていても、仮にFIREをしたとしても、人は安心して暮らすことはできないのです。
⾼⾐ 紗彩
株式会社ミッション・ミッケ人生デザイン研究所 代表取締役
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