(※画像はイメージです/PIXTA)

若者期と高齢期に挟まれた35歳から64歳のミドル期のひとり暮らしが増加しています。シングル化の傾向は日本全土で強まっていますが、特に東京区部で卓越して進行しています。本記事では、宮本みち子・大江守之編著、丸山洋平・松本奈何・酒井計史著「東京ミドル期シングルの衝撃」(東洋経済新報社)から一部抜粋・編集して、ミドル期シングルにおける親との関わり方の実態を解説します。

遠方の親との交流頻度

親との地理的距離(出身地でみる)でも関係をみてみましょう。

 

出所:「単身世帯の生活と意識についての調査」(2019)より筆者作成
[図表2]出身地別、親との交流頻度 出所:「単身世帯の生活と意識についての調査」(2019)より筆者作成

 

図表2は、出身地との関係を示しています。男性と女性とでは傾向がまったく異なっています。男性の場合、出身地が遠くなるほど交流頻度は下がり年数回が多数を占めるようになります。一方女性の場合、距離による違いはそれほどなく、週に1回以上、または月に数回の交流をしている人が少なくありません。なお、東京区部出身者の場合は週に1回以上接触している人が男性で約4割、女性で約5割と接触頻度が高くなっています。日常的に親と行き来している人が少なくないものと思われます。

 

東京区部出身の女性は、身内が近くに複数いるので頻繁に連絡をとっているといっています。

 

・家族はみんな都心にいるので、すぐ連絡を取り合えます。(41歳女性)

 

なお、「ほとんど交流がない」という人に限ってみると、男女とも必ずしも親が遠方にいるとはいえません。距離のバリアのために頻度が低いというよりも何らかの理由があって疎遠になっていることが感じられます。

 

本人の年収が親との交流頻度に影響を与えている?

出所:「単身世帯の生活と意識についての調査」(2019)より筆者作成
[図表3]年収別、親との交流頻度 出所:「単身世帯の生活と意識についての調査」(2019)より筆者作成

 

交流頻度が経済状況と関係するかどうかを「年収」でみると、図表3の通り、週1回から年数回までに関してはそれほど大きな違いはみられません。一方、「年収300万円未満」の層に限ってみると、親との交流が「ほとんどない」人がやや多くなっています。特に男性にその傾向がみられます。

 

・実家には用事がない限り電話もしませんし、実家からも連絡は来ません。(37歳男性)

 

・母親が青森に住んでいて、たまに連絡をとるくらいです。母は足が少し悪いですが健康です。青森には仕事がないので、母も戻って来いとはいいません。(45歳男性、生活保護受給)

 

おひとりさまは正月を誰と過ごす?

出所:「 単身世帯の生活と意識についての調査」 (2019)より筆者作成
[図表4]年齢別(左)、年収別(右)、お正月を親と過ごした人の割合 出所:「 単身世帯の生活と意識についての調査」
(2019)より筆者作成

 

次に、親との交流の具体的例として、正月を誰と過ごすのかをみてみましょう。親のいない人は除外した上で、年齢でみると、図表4(左)の通りで、若いときほど親と過ごす比率が高くなっています。男女で比べると、どの年齢でも女性のほうが10%以上上回っています。出身地による違いはありません。

 

正月に郷里で過ごすには費用がかかりそれが障害になる例もあると思われますので、年収との関係をみますと、図表4(右)の通りで、300万円未満層で正月を親と過ごす人が顕著に少なく、男性では300万〜500万円未満でもややその傾向がみられます。先にみた交流頻度と比べて年収との関係が顕著に出ているのは、実家に帰るための費用が障害になっているのかもしれません。

 

ただし、日頃の交流頻度が少ない場合でも正月をともに過ごす比率が高いのは、正月というものが身内で過ごす行事として定着し、シングルにとっては親と正月を過ごすことが年中行事となっているのだろうと思われます。

 

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※本記事は「東京ミドル期シングルの衝撃」(東洋経済新報社)を一部抜粋・編集したものです。

東京ミドル期シングルの衝撃

東京ミドル期シングルの衝撃

宮本 みち子、丸山 洋平

東洋経済新報社

未婚率全国トップの東京23区で進む「日本の未来」とは。 孤独担当大臣も知らない、35歳から64歳の「都市型」孤独に焦点を当てる。 高齢者のひとり暮らしが増加していることは誰でも知っている。その現象は公私ともに対応が…

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