「人生100年時代」の知られざる混沌
「一人暮らし高齢者」が増加傾向にあります(65歳以上を高齢者と定義)。
昭和55年には男性約19万人、女性約69万人であり、65歳以上人口に占める一人暮らしの方の割合は男性4.3%、女性11.2%でした。しかし令和2年には男性約230万人、女性約440万人、65歳以上人口に占める割合は男性15.0%、女性22.1%となっています。
高齢人口の増加とともに一人暮らし世帯の割合も右肩上がりに上昇していくと予測されており、令和32年には男性26.1%、女性29.3%となる見込みです。
以上の実態、出典元は内閣府が毎年公表している年次報告書『高齢社会白書』(令和6年版)。平成8年から始まった本取り組みは、人生100年時代と称される日本の様相を赤裸々に明かしています。
老後不安をはじめ抽象的なテーマが注目される昨今ですが、実際のところ「どんな数字が出ているのか?」。同調査より、具体的なデータを見ていきましょう。
急増する社会保障費…「過去最高水準を更新」の現実
■増大する社会保障費
国立社会保障・人口問題研究所『2021年度社会保障費用の概要』より、社会保障給付費(年金・医療・福祉その他を合わせた額)全体について見てみると、2021年度は138兆7,433億円となり過去最高の水準となりました。
社会保障給付費のうち、高齢者関係給付費は、83兆4,321億円。前年度の83兆1,535億円から2,786億円増加しています。社会保障給付費全体に占める割合は60.1%と半数を大きく超えています。
2021年度の年齢別・1人当たり医療費(医療保険制度分)を見てみると、60歳~64歳で「37.7万円」、65歳~69歳で「47.0万円」、70歳~74歳で「60.5万円」、75歳~79歳で「76.9万円」、80歳~84歳で「90.9万円」、85歳~89歳で「104.0万円」、90歳~94歳で「113.2万円」、95歳~99歳で「118.5万円」、そして100歳以降は「115.1万円」となっています。
60代と80代では、医療費は倍額。もちろん加速度的に進む少子高齢化によって、この金額はさらに増大してくことでしょう。労働世代もさることながら、高齢者の方の負担も計り知れないところですが、実は「経済的な暮らし向きについて心配がない65歳以上」は68.5%に達していることが報告されています。