株価大暴落の要因と今後の相場見通し
株価急落は“失われた30年”の戒めか
もうひとつの懸念は、財政からの景気抑制要因である。円安インフレにより政府の税収が大きく膨れ上がっている。政府はプライマリーバランスが2025年度に黒字になるとの試算をまとめたが、それは2023年の-5.2%(OECD2023年11月)からの鋭角的回復になる。
逆からみれば、財政が2024~2025年にかけて民間需要を年間2.6%押し下げるということを意味する。円安インフレは家計から実質所得の減少という形で所得を奪っているが、政府には巨額の所得移転をもたらしているのである。
この、政府の税収増という巨額の所得をそのままにしておけば、民間消費は大打撃を受けることになる。
現時点においては円安のデメリットを受け続け、繁栄の波に入れていない個人を救済する必要があるが、その処方は明らかである。インフレによって潤った財政が「恒久減税」という形で、インフレによって富を奪われた国民にお金を返還するべきであろう。
過去2000年と2007年の2回、日本は時期尚早の財政・金融引き締めによって景気後退を深刻化させ、10年で終わるはずの失われた時代が、20年、30年と続いた。今度こそ過去の誤りを繰り返さないように、日本株価の急落はそのことを戒めていると考えられる。
市場がこれから“絶好の買い場”となる見込みも
とはいえ、「10年にわたって続いた日銀のリスクテイク促進が、一気にリスクテイク抑制へとシフトした」とする見方は、日銀にとって至極不本意なはずである。また米国経済の減速は利下げを促進することで株高要因ととらえられるはずである。
日本政府はすでに株価下落を注視するとのメッセージを発しており、日銀からも市場を安堵させるトーンの発言が出てくるかもしれない。「誇大表示のパラダイム大転換」を織り込もうとした市場の急落場面は、絶好の買い場となる可能性が高いと思われる。
好調な企業業績、急激に魅力度を強めた株式バリュエーションは、日本株持たざるリスク(FOMO)を感じている全投資主体には“良い買い場”を提供しているのではないだろうか。
武者 陵司
株式会社武者リサーチ
代表
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