●米雇用統計の悪化を受け、ナスダックは調整局面入り、市場で9月50bp利下げの見方が優勢に。
●弊社は米景気後退入りを想定せず、米ハイテク株は投資成果の評価と景気不安で大幅に下落。
●業績見通しは良好、適切な利下げなどで過度な悲観論が後退し米国株は落ち着きを取り戻そう。
米雇用統計の悪化を受け、ナスダックは調整局面入り、市場で9月50bp利下げの見方が優勢に
8月2日の米国株式市場では、同日発表された7月の米雇用統計が市場予想を下回ったことで景気の先行き不安が高まり、ダウ工業株30種平均、S&P500種株価指数、ナスダック総合指株価指数がそろって大幅続落となりました。ナスダックは7月10日につけた史上最高値から8月2日まで、下落率が調整局面入りの目安となる10%を超えました(終値ベース、以下同じ)。
市場では、米連邦準備制度理事会(FRB)の元エコノミスト、クラウディア・サーム氏が考案した、いわゆる「サーム・ルール(失業率の3ヵ月移動平均が過去12ヵ月の最低値から0.5ポイント以上上昇した場合に景気後退入りを仮定)」が意識されており、すでに9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利下げ予想が優勢となり、一部には緊急利下げを見込む向きもあります。
弊社は米景気後退入りを想定せず、米ハイテク株は投資成果の評価と景気不安で大幅に下落
なお、弊社は米国の実質GDP成長率について、2024年は前年比2.5%、2025年は同1.8%を予想しています。2025年の成長ペースは鈍化するものの、潜在成長率(中長期的に持続可能な成長率)程度で推移し、景気後退入りは想定していません。年内の米利下げについては、11月の実施も加え、9月、11月、12月の3回、25bpずつとの見方に変更しました。米国の成長率が目先いったん低下しても、利下げによって持ち直していくと考えています。
一方、米大手ハイテク企業については、これまで現金を稼ぐ力や、景気変動の影響を受けにくい高い成長性が株価を支えていました。しかしながら、全体的に株価の割高感がやや強まっていたことや、直近の一部決算で、人工知能(AI)関連などの投資成果がみえにくいとの指摘もあったことで、米景気の下振れ懸念が浮上したことをきっかけに、一気に株価調整が進みました。
業績見通しは良好、適切な利下げなどで過度な悲観論が後退し米国株は落ち着きを取り戻そう
なお、S&P500種株価指数を構成する主要500社および11業種について、市場が予想する2024年と2025年の純利益の伸び率は、8月2日時点で図表1の通りです。500社全体と、ハイテク企業を含む情報技術や通信サービスは、2024年と2025年とも2ケタの伸びが見込まれており、業績見通しは依然良好です。業績予想以上に株価が上昇すれば、やや大きめでも調整が入るのは自然なことで、株高基調の持続には必要かつ健全な動きと考えます。
直近の米景気後退期、ナスダックは2020年2月19日の史上最高値から3月23日まで30.1%下落しましたが、その後6月8日には史上最高値を更新しました(図表2)。この動きはコロナ・ショックと強力な金融・財政政策によるもので、今回は状況が異なるため、株価変動は当時ほど大きくならないとも考えられます。今後、FRBの適切な金融政策などで過度な景気悲観論が和らげば、米国株は次第に落ち着きを取り戻すとみています。
(2024年8月5日)
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ダウ、S&P500、ナスダック…“そろって大幅続落”も「株高基調の持続には必要かつ健全な動き」【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト
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